上部尿路上皮癌に対する術前尿管鏡検査の有用性についての検討

緒言 : 上部尿路上皮癌は術前に画像検査のみでの正確な病期診断は困難である. 尿管鏡検査および尿管鏡下腫瘍生検は上部尿路上皮癌の確定診断に有用な手段であるが, 腫瘍播種や膀胱内再発のリスクが懸念される. 今回, 術前尿管鏡検査の有用性について検討した. 対象と方法 : 2004年-2018年の期間で上部尿路上皮癌の診断で腎尿管全摘除術を施行した177例に対して後方視的に解析を行った. 術前尿管鏡施行群と尿管鏡非施行群との比較, 治療成績への影響, 尿管鏡下腫瘍生検での組織異型度と病理組織学的深達度との関連について検討を行った. 結果 : 術前尿管鏡施行群は125例 (70.6%), 尿管鏡非施...

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Published inJapanese Journal of Endourology Vol. 32; no. 2; pp. 205 - 211
Main Authors 上村, 慶一郎, 西原, 聖顕, 末金, 茂高, 名切, 信, 林, 秀一郎, 熊谷, 壽二, 小笠原, 尚之, 井川, 掌, 黒瀬, 浩文, 築井, 克聡, 植田, 浩介, 松尾, 光哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本泌尿器内視鏡学会 2019
Japanese Society of Endourology
Subjects
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ISSN2186-1889
2187-4700
DOI10.11302/jsejje.32.205

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Summary:緒言 : 上部尿路上皮癌は術前に画像検査のみでの正確な病期診断は困難である. 尿管鏡検査および尿管鏡下腫瘍生検は上部尿路上皮癌の確定診断に有用な手段であるが, 腫瘍播種や膀胱内再発のリスクが懸念される. 今回, 術前尿管鏡検査の有用性について検討した. 対象と方法 : 2004年-2018年の期間で上部尿路上皮癌の診断で腎尿管全摘除術を施行した177例に対して後方視的に解析を行った. 術前尿管鏡施行群と尿管鏡非施行群との比較, 治療成績への影響, 尿管鏡下腫瘍生検での組織異型度と病理組織学的深達度との関連について検討を行った. 結果 : 術前尿管鏡施行群は125例 (70.6%), 尿管鏡非施行群は52例 (29.4%) であった. 尿管鏡非施行群は尿管鏡群と比較して有意に肉眼的血尿を有し (P=0.033), 臨床病期も高かった (P=0.007). 手術待機期間は尿管鏡施行群が中央値で66日 (49-94日) と尿管鏡非施行群の51.5日 (29-72日) より有意に長かった (P<0. 001). しかし, 全生存率, 無再発生存率および, 膀胱内無再発生存率に関して両群に有意差は認めなかった (P=0.426, P=0.766および, P=0.809). 尿管鏡施行群の中で尿管鏡下腫瘍生検が可能であった91例では, 生検組織異型度がGrade 3の症例はGrade 1, 2の症例と比較して有意にpT3以上の浸潤癌を多く認めた (P=0.004). 考察 : 術前尿管鏡検査により手術待機期間は有意に延長するが, 検査による生命予後悪化や膀胱内再発のリスクは上がらない. 術前尿管鏡検査は術前補助化学療法や腎温存手術を考慮される症例に対し, 画像検査のみで診断や治療方針決定に苦慮する際には有用な補助検査法と考えられる.
ISSN:2186-1889
2187-4700
DOI:10.11302/jsejje.32.205