野本論文に対するEditorial Comment

野本らはこの症例報告において発症後8日目から心機能の改善を認めた劇症型心筋炎の治療経過を追っている. 転院してきたときは発症6日目であったうえ, IABPとPCPSもすでに挿入されて5日以上経っていた. 筆者らも論じているように劇症型心筋炎の心機能回復の蓋然性は心筋逸脱酵素の低下やQRS幅の改善が早期に認められれば高いとはいえ, その見極めは概して困難である. 劇症型心筋炎に対する経皮的補助循環はPCPSがその主体となるが, PCPS治療の平均日数は5日ともいわれており, すなわちPCPS装着後5日で心機能が回復しない場合はPCPSだけでは救命できないことが多いと考えられる. 一方, PCPS...

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Published inShinzo Vol. 46; no. 4; pp. 503 - 504
Main Author 絹川, 弘一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2014
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.46.503

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Summary:野本らはこの症例報告において発症後8日目から心機能の改善を認めた劇症型心筋炎の治療経過を追っている. 転院してきたときは発症6日目であったうえ, IABPとPCPSもすでに挿入されて5日以上経っていた. 筆者らも論じているように劇症型心筋炎の心機能回復の蓋然性は心筋逸脱酵素の低下やQRS幅の改善が早期に認められれば高いとはいえ, その見極めは概して困難である. 劇症型心筋炎に対する経皮的補助循環はPCPSがその主体となるが, PCPS治療の平均日数は5日ともいわれており, すなわちPCPS装着後5日で心機能が回復しない場合はPCPSだけでは救命できないことが多いと考えられる. 一方, PCPS装着後5日以内に心機能が回復した例では離脱が可能であったとも考えられる. われわれは多くの劇症型心筋炎の症例で発症5日目がPCPSからVAD治療へ転換する分水嶺と考えている. PCPSを5日以上施行するとこの症例でも認められたように出血合併症, 血管合併症が著しく増加するからである.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.46.503