当院で診療した成人T 細胞白血病・リンパ腫症例におけるCCR4遺伝子変異と臨床病態・腫瘍細胞の免疫形質との関連

【背景と目的】成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)では,CCケモカイン受容体4(CCR4)のC末端の細胞内ドメインにCCR4遺伝子変異による機能獲得型変異が高頻度に認められ,ヒト化抗CCR4抗体モガムリズマブの治療効果に影響を与える可能性が示唆されている.本研究では,天理よろづ相談所病院で診療したATLL症例におけるCCR4遺伝子変異と臨床病態・腫瘍細胞の免疫形質との関連を明らかにすることを目的とした. 【方法】1993年から2021年の間に診療したATLL症例のなかで,マルチカラー・フローサイトメトリー(M-FCM)で検出した検体中の異常細胞分画(unusual cell populati...

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Published in天理医学紀要 Vol. 24; no. 2; pp. 76 - 90
Main Authors 竹岡, 加陽, 前川, ふみよ, 増谷, 弘, 大野, 仁嗣, 片岡, 直紀, 茶木, 善成, 林田, 雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所 25.12.2021
天理よろづ相談所医学研究所
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ISSN1344-1817
2187-2244
DOI10.12936/tenrikiyo.24-006

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Summary:【背景と目的】成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)では,CCケモカイン受容体4(CCR4)のC末端の細胞内ドメインにCCR4遺伝子変異による機能獲得型変異が高頻度に認められ,ヒト化抗CCR4抗体モガムリズマブの治療効果に影響を与える可能性が示唆されている.本研究では,天理よろづ相談所病院で診療したATLL症例におけるCCR4遺伝子変異と臨床病態・腫瘍細胞の免疫形質との関連を明らかにすることを目的とした. 【方法】1993年から2021年の間に診療したATLL症例のなかで,マルチカラー・フローサイトメトリー(M-FCM)で検出した検体中の異常細胞分画(unusual cell population; UCP)が40%以上であった20例を対象とした.CCR4遺伝子変異はPCR・ダイレクトシークエンシングで解析し,CCR4遺伝子の部分欠失を認めた症例ではフラグメント解析を追加した.さらにヘテロ2本鎖移動度解析の検出能力についても検討した. 【結果】20例中8例にCCR4遺伝子変異を認めた.6例は1塩基置換によるナンセンス変異(Q330*,2例;Y331*,4例),1例は1塩基多型バリアントアリルのコピー数増加, 残りの1例はQ336–T342の欠失を伴うミスセンス変異(Q336H)で,フラグメント解析で18塩基の欠失を確認した.ヘテロ2本鎖移動度解析では8例中6例でheteroduplex DNAを認めた. 臨床病型との関連は,急性型11例のうち6例(55%)とリンパ腫型5例のうち2例(40%)が変異陽性であったのに対し,慢性型・くすぶり型の4例には変異を認めなかった. CCR4の発現レベルが強陽性であった8例 中4例(50%)がナンセンス変異陽性,ナンセンス変異陽性6例中4例(67%)がCCR4強陽性であった.CCR4遺伝子変異陽性であった1例ではサルベージ治療としてモガムリズマブが投与され,部分奏効の効果が得られた. 【結論】CCR4の発現レベルとCCR4ナンセンス変異が相関する可能性が示唆された.CCR4遺伝子変異とモガムリズマブの治療効果の関係を明らかにするためには,M-FCMによるCCR4の発現レベルや%UCPの評価を含めた前向きの臨床試験が必要である.
ISSN:1344-1817
2187-2244
DOI:10.12936/tenrikiyo.24-006