ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた血管の再生

人工血管は血管外科領域の手術で極めて重要な人工材料であるが,6 mm未満の小口径人工血管は開存率が低下することが知られている。そこで,本研究では,患者自身の脂肪組織由来の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)を用いて血管構造を再生することが可能かを検討した。手術中に余剰となり摘出した脂肪組織より細胞を獲得し培養した。培養した細胞でセルブロックを作製し,幹細胞表面マーカー(CD90,CD105,CD14,CD34,CD45,CD79α)の免疫染色とIn Vitroで脂肪,骨,軟骨への分化誘導実験を行った。回収した細胞を,縦3 cm×横5 cmのPGAシートに撒き,血...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 52; no. 4; pp. 87 - 97
Main Authors 駒ヶ嶺, 正英, 小島, 宏司, 縄田, 寛, 富田, 真央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2025
聖マリアンナ医科大学医学会
St. Marianna University Society of Medical Science
Subjects
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ISSN0387-2289
2189-0285
DOI10.14963/stmari.52.87

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Summary:人工血管は血管外科領域の手術で極めて重要な人工材料であるが,6 mm未満の小口径人工血管は開存率が低下することが知られている。そこで,本研究では,患者自身の脂肪組織由来の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)を用いて血管構造を再生することが可能かを検討した。手術中に余剰となり摘出した脂肪組織より細胞を獲得し培養した。培養した細胞でセルブロックを作製し,幹細胞表面マーカー(CD90,CD105,CD14,CD34,CD45,CD79α)の免疫染色とIn Vitroで脂肪,骨,軟骨への分化誘導実験を行った。回収した細胞を,縦3 cm×横5 cmのPGAシートに撒き,血管への分化誘導培地を用いて5―7日間培養した。その後,同シートを直径7 mm(3 cm長)のシリコンチューブに全周性に覆い,免疫不全マウス(以下,ヌードマウス)の背部皮下に埋植し,6週及び8週後に摘出した。H&E染色,血管壁の評価としてEVG染色及び血管内皮細胞マーカーとしてCD31による免疫染色を行い,ヒトの血管と比較検討した。摘出した組織は,肉眼的に管状を呈した血管に類似していた。H&E染色でも血管に類似した所見を示し,一部ではあるがEVGやCD31陽性の組織も確認できた。今後,培養条件を検討することで,組織工学的手法を用いて脂肪由来のMSCから抗血栓性の高い小口径の再生血管の作製を目指す。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.52.87