Brugada症候群を呈する歯科治療恐怖症患者の歯科治療の経験

Brugada症候群は,心電図で右脚ブロック様波形とcoved型またはsaddleback型のST上昇を呈し,心室細動で突然死にいたる疾患である.この心室細動は,歯科治療によるストレスで誘発されることが報告されている.われわれは,同症候群に加えて,歯科治療恐怖症と異常絞扼反射を有する患者の歯科治療を経験した. 患者は52歳女性.既往歴は,Brugada症候群,歯科治療恐怖症,異常絞扼反射を有しており,左側上下顎臼歯部の疼痛を主訴とし受診した.家族歴は,父が突然死,弟が失神の既往がありICD植え込み術を施行していた.また,息子も同症候群を有していた. 初診時,エックス線所見で上顎左側第二大臼歯に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 36; no. 2; pp. 101 - 105
Main Authors 岸野, 加奈美, 雨宮, 傑, 山本, 俊郎, 西垣, 勝, 西出, 直人, 大迫, 文重, 坂, 真子, 市岡, 宏顕, 金村, 成智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 2015
日本障害者歯科学会
The Japanese Society for Disability and Oral Health
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.36.101

Cover

More Information
Summary:Brugada症候群は,心電図で右脚ブロック様波形とcoved型またはsaddleback型のST上昇を呈し,心室細動で突然死にいたる疾患である.この心室細動は,歯科治療によるストレスで誘発されることが報告されている.われわれは,同症候群に加えて,歯科治療恐怖症と異常絞扼反射を有する患者の歯科治療を経験した. 患者は52歳女性.既往歴は,Brugada症候群,歯科治療恐怖症,異常絞扼反射を有しており,左側上下顎臼歯部の疼痛を主訴とし受診した.家族歴は,父が突然死,弟が失神の既往がありICD植え込み術を施行していた.また,息子も同症候群を有していた. 初診時,エックス線所見で上顎左側第二大臼歯に歯髄に達するう蝕,および下顎左側第二大臼歯近心隣接面にう蝕を認めた.さらに,下顎右側第二小臼歯根尖に骨吸収を認めた.はじめに,う蝕による疼痛除去目的,ならびに心室細動誘発リスクであるストレスおよび異常絞扼反射の軽減を目的に,静脈内鎮静法下で抜髄およびう蝕処置を行った.さらに,系統的脱感作法を用い,心室細動誘発時の迅速な対応のために,体外除細動器を準備した状態で歯科治療を行った.今回の治療を通して,心室細動などの全身的な異常はなかった. Brugada症候群を有する歯科治療恐怖症患者に対して,静脈内鎮静法および系統的脱感作法を用いた行動調整を併用することですみやかに歯科治療を行うことができた.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.36.101