走化性適応システムは受容体アレイの自発的活性化に寄与する

「1. 大腸菌の走化性とシグナル伝達」 走化性とは誘引物質に近づき忌避物質から遠ざかる生物のしくみです. 大腸菌ではこれらの物質を膜貫通型受容体で認識し, 細胞質へのシグナル伝達を経てべん毛の回転方向が制御されます. べん毛は細菌が持つ運動器官で, 細胞膜に埋まったモーターとプロペラとして働く繊維, 両者をつなぐフックで構成されています. 大腸菌は細胞本体の周囲に6本程度のべん毛を持っており, これらを使って溶液中を「泳いで」移動しています. モーターが反時計方向(Counterclockwise: CCW)に回転するとべん毛が束になって細胞が直進し, 時計方向(Clockwise: CW)の...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 4; pp. 196 - 198
Main Authors 内田, 裕美子, 福岡, 創
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.64.196

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Summary:「1. 大腸菌の走化性とシグナル伝達」 走化性とは誘引物質に近づき忌避物質から遠ざかる生物のしくみです. 大腸菌ではこれらの物質を膜貫通型受容体で認識し, 細胞質へのシグナル伝達を経てべん毛の回転方向が制御されます. べん毛は細菌が持つ運動器官で, 細胞膜に埋まったモーターとプロペラとして働く繊維, 両者をつなぐフックで構成されています. 大腸菌は細胞本体の周囲に6本程度のべん毛を持っており, これらを使って溶液中を「泳いで」移動しています. モーターが反時計方向(Counterclockwise: CCW)に回転するとべん毛が束になって細胞が直進し, 時計方向(Clockwise: CW)の回転でべん毛束がほどけて細胞は方向転換をします. 誘引刺激では直進, 忌避刺激では方向転換を主にすることで細胞は走化性を示します. 無刺激の定常状態では直進と方向転換を繰り返しランダム様の運動をしています. シグナル伝達とその調節は受容体ならびに細胞質の走化性(Che)タンパク質群が担っています.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.196