HIV-1の被膜形成機構の解明

「1. はじめに」 ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)は, エイズの原因ウイルスの一つであり, 2022年時点で3,900万人の感染者が報告される公衆衛生上の脅威である. HIV-1は被膜ウイルスであり, 複製サイクル後期に宿主感染細胞の細胞膜から出芽する際に, 宿主の膜脂質を被膜として獲得する. この新粒子形成過程に重要な役割を果たしているのが, マルチドメインタンパク質Gag (Group-specific antigen)である. GagはN末のMAドメインのミリストイル化と塩基性アミノ酸に富んだ配列により, 細胞膜内層のリン脂質PI(4,5)P2にターゲットされる. 細胞膜上でG...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 4; pp. 202 - 204
Main Author 冨重, 斉生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.64.202

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Summary:「1. はじめに」 ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)は, エイズの原因ウイルスの一つであり, 2022年時点で3,900万人の感染者が報告される公衆衛生上の脅威である. HIV-1は被膜ウイルスであり, 複製サイクル後期に宿主感染細胞の細胞膜から出芽する際に, 宿主の膜脂質を被膜として獲得する. この新粒子形成過程に重要な役割を果たしているのが, マルチドメインタンパク質Gag (Group-specific antigen)である. GagはN末のMAドメインのミリストイル化と塩基性アミノ酸に富んだ配列により, 細胞膜内層のリン脂質PI(4,5)P2にターゲットされる. 細胞膜上でGag はGag latticeと呼ばれる多量体を形成し, ウイルス粒子アセンブリの足場となる. Lattice形成の進行とともに固有の膜曲率を持った新粒子が出芽し, 最終的に宿主タンパク質の助けを借りて新粒子は細胞膜から放出される. ウイルス被膜の脂質組成は, 複数のリピドミクス解析により明らかになっている.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.202