塚尾ら“経気管支凍結肺生検が診断に有用であった血管内悪性リンパ腫の1例”

血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma, IVLBCL)は稀な疾患であり, 実臨床では診断に難渋することが少なくない. IVLBCLでは, 一般にリンパ節腫大を認めず, また症状としても, 発熱(不明熱), 倦怠感などの非特異的なものが多い. 血清LDHや可溶性IL-2受容体(sIL-2R)の上昇が診断の手掛かりとはなるが, 本症の確定診断には組織診断が必須となる. しかし, そのために骨髄生検やランダム皮膚生検が実施されるが, その診断率は必ずしも高くない. また, 経気管支的肺生検(TBLB)による診断率も30~50%と低く,...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 46; no. 5; p. 263
Main Author 須田, 隆文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本呼吸器内視鏡学会 25.09.2024
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.46.5_263

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Summary:血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma, IVLBCL)は稀な疾患であり, 実臨床では診断に難渋することが少なくない. IVLBCLでは, 一般にリンパ節腫大を認めず, また症状としても, 発熱(不明熱), 倦怠感などの非特異的なものが多い. 血清LDHや可溶性IL-2受容体(sIL-2R)の上昇が診断の手掛かりとはなるが, 本症の確定診断には組織診断が必須となる. しかし, そのために骨髄生検やランダム皮膚生検が実施されるが, その診断率は必ずしも高くない. また, 経気管支的肺生検(TBLB)による診断率も30~50%と低く, さらにより有用な組織学的アプローチが求められている. 今回, 塚尾らは, 頭痛, 発熱, 全身倦怠感を主訴とし, 骨髄生検とランダム皮膚生検を施行したが確定診断に至らず, 最終的にTBLBと経気管支凍結肺生検(transbronchial lung cryobiopsy, TBLC)にて組織診断した58歳男性の症例を報告した. 本症例では, 胸部CT上, 両側上葉に淡いすりガラス影を認め, ガリウムシンチグラフィでも同部に集積が見られたことから肺病変の存在が疑われた. TBLBならびにTBLCの組織標本にて, 血管内に中型異型リンパ球の集簇を認め, また合わせて行った免疫染色の結果からIVLBCLと診断された. TBLBでは6検体中2個で悪性所見を認めなかったが, TBLCでは2検体すべてで異型リンパ球が確認でき, TBLCの方が診断率が高かった. TBLCは凍結プローブを用いる経気管支鏡的な生検手技で, 本邦でも専門施設を中心に普及しつつある. TBLCでは, TBLBと比較し, 5~15mmの大きな検体サイズが得られ, また組織の挫滅が少なく, 免疫染色にも適している. 合併症としては気胸や出血などがあり, 出血はTBLBより頻度が高いとされるが, 止血用バルーンなどを用いることによって対処が可能である. 本論文は, 組織学的な診断が難しいIVLBCLに対して, TBLCが有望な生検手技となり得る可能性があることを示唆している. 今後, さらに症例を集積し, IVLBCLの診断におけるTBLCの有用性が検証されることが期待される.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.46.5_263