メキシコ合衆国農村部での思春期ピアエデュケーションが地域住民の健康意識に及ぼす影響

目的   著者らは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業活動として「保健医療従事者と思春期ピアリーダーによる健康なライフスタイルづくりシステム化支援事業」を実施した。思春期ピアエデュケーション活動の対象は主として思春期の学生であるが、ピアエデュケーション活動による地域住民への波及効果を明らかにすることは今後のピアエデュケーション活動の発展のために必要な事項であると考え、本研究ではメキシコ合衆国の農村部で思春期ピアエデュケーション活動を実践することにより健康に関する意識や知識が地域住民に浸透しているのか評価することを目的とした。 方法   メキシコ合衆国ベラクルス州ポサリカ保...

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Published inKokusai Hoken Iryo (Journal of International Health) Vol. 29; no. 4; pp. 267 - 275
Main Authors 上原, 里程, 江角, 伸吾, 吉田, 和隆, 高村, 寿子, 春山, 早苗, 阿相, 栄子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本国際保健医療学会 20.12.2014
JAPAN ASSOCIATION FOR INTERNATIONAL HEALTH
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ISSN0917-6543
DOI10.11197/jaih.29.267

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Summary:目的   著者らは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業活動として「保健医療従事者と思春期ピアリーダーによる健康なライフスタイルづくりシステム化支援事業」を実施した。思春期ピアエデュケーション活動の対象は主として思春期の学生であるが、ピアエデュケーション活動による地域住民への波及効果を明らかにすることは今後のピアエデュケーション活動の発展のために必要な事項であると考え、本研究ではメキシコ合衆国の農村部で思春期ピアエデュケーション活動を実践することにより健康に関する意識や知識が地域住民に浸透しているのか評価することを目的とした。 方法   メキシコ合衆国ベラクルス州ポサリカ保健区の3か所の保健所(レモリーノ、トトモストレ、セロ・デ・カルボン)が管轄する区域に居住する12歳から69歳までの住民を対象とした。上記3地区に居住する該当年齢の世帯ごとの住民リストを作成し、各地区の全世帯から50%を無作為に抽出した。抽出された世帯の住民を調査の対象者とし、2010年3月から4月にかけてピアエデュケーション活動前の聞き取り調査を行った。 結果   自尊感情に関する設問では、「たいていの人がやれる程度には物事ができる」と回答した割合がピアエデュケーション活動前の80%から94%に有意に増加した(p<0.001)。生活習慣に関する設問では、2〜3日に一度あるいは毎日野菜や果物を食べる人の割合が55%から65%へ有意に増加した。(p<0.001)。性感染症および避妊に関する知識については、性感染症に関して正しい回答をした頻度が活動後に減少していたが、避妊に関しては正しい回答をした頻度が有意に増加していた。ピアエデュケーション活動に関する設問では、ピアエデュケーターという言葉を聞いたことがある頻度が44%から61%へ、ピアエデュケーション活動を知っている頻度が33%から49%へ、ともに有意に増加した(いずれもP<0.001)。 結論   メキシコ合衆国農村部で実施した思春期ピアエデュケーション活動は、地域住民全体に自尊感情や健康意識の向上をもたらす可能性が示された。性感染症や避妊の知識については地域全体への普及効果は限定されていた。しかし、コミュニティーで実施される健康教育への参加意識の増加は、知識伝達への足掛かりとなることが示唆された。
ISSN:0917-6543
DOI:10.11197/jaih.29.267