腹部大動脈瘤破裂手術症例の検討

【背景】腎動脈下腹部大動脈瘤(AAA)手術は安全に行われるようになってきたが,依然として破裂性AAA(ruptured AAA; rAAA)手術成績は不良である.当院におけるrAAA手術の検討を行った.【対象・方法】1989年4月~2004年12月の15年間にrAAAにて緊急手術された55例を対象とした.その内訳は男性37例,女性18例,平均年齢は74.9歳(58~93歳).重症度をFitzgerald分類に準じ分類,また生存例,死亡例に分け比較検討した.【結果】Fitzgerald分類1型13例,2型6例,3型25例,4型11例であった.死亡例は20例(36.4%),そのうち95%がショック...

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Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 19; no. 1; pp. 1 - 5
Main Authors 田中, 二郎, 出雲, 明彦, 安藤, 廣美, 鮎川, 勝彦, 安恒, 亨, 内田, 孝之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2010
日本血管外科学会
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.19.1

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Summary:【背景】腎動脈下腹部大動脈瘤(AAA)手術は安全に行われるようになってきたが,依然として破裂性AAA(ruptured AAA; rAAA)手術成績は不良である.当院におけるrAAA手術の検討を行った.【対象・方法】1989年4月~2004年12月の15年間にrAAAにて緊急手術された55例を対象とした.その内訳は男性37例,女性18例,平均年齢は74.9歳(58~93歳).重症度をFitzgerald分類に準じ分類,また生存例,死亡例に分け比較検討した.【結果】Fitzgerald分類1型13例,2型6例,3型25例,4型11例であった.死亡例は20例(36.4%),そのうち95%がショックにて搬送されていた.そのおもな死因は術中,術直後の急性循環不全による多臓器不全,播種性血管内凝固症候群が14例,周術期以後の呼吸器合併症が4例であった.とくに術前のショック状態は手術成績の不良因子であった.死亡20症例を検討するに,初療の段階で,AAA破裂と判断できず診断遅延となり死亡に至った症例も3例(15%)認められた.また,5例(25%)においては以前に手術適応のAAAが指摘されていた.【結論】rAAA症例の救命にはできる限り早急の手術治療と術後の集中治療が必要であることに異論はない.当検討の結果からは救命率を向上させる別の因子としてrAAAを診断する初療医の判断,加えて手術適応のある未破裂AAAの待機手術への速やかな勧告が必要と思われた.rAAAによる死亡率減少のためには,当地域の医療従事者や未破裂AAAの患者に対するさらなる啓蒙が必要である.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.19.1