大動脈弁置換術後2年で人工弁構造的劣化による有症候性人工弁狭窄を認めた人工透析患者の1症例

症例は60代男性。IgA腎症を原疾患とする末期腎不全のために血液維持透析中である。既往歴にはC型慢性肝炎および高血圧症があり,大動脈弁右冠尖逸脱に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症に対して生体弁(CEP Magna EASE 23 mm)を用いた大動脈弁置換術(aortic valve replacement; AVR)が施行された。術後2年で労作時の胸部違和感および透析中の血圧低下が出現し,定期外来で行われた経胸壁心エコー図検査(transthoracic echocardiography; TTE)にて生体弁の著明な石灰化と開放制限が認められ,人工弁位の最大血流速度は5.32 m/秒と著明な上昇が...

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Published in医学検査 Vol. 74; no. 3; pp. 581 - 589
Main Authors 坂本 佳子, 石隈 麻邪, 於保 恵, 鍋嶋 洋裕, 蒲原 啓司, 末岡 榮三朗, 梅木 俊晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.07.2025
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.24-72

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Summary:症例は60代男性。IgA腎症を原疾患とする末期腎不全のために血液維持透析中である。既往歴にはC型慢性肝炎および高血圧症があり,大動脈弁右冠尖逸脱に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症に対して生体弁(CEP Magna EASE 23 mm)を用いた大動脈弁置換術(aortic valve replacement; AVR)が施行された。術後2年で労作時の胸部違和感および透析中の血圧低下が出現し,定期外来で行われた経胸壁心エコー図検査(transthoracic echocardiography; TTE)にて生体弁の著明な石灰化と開放制限が認められ,人工弁位の最大血流速度は5.32 m/秒と著明な上昇が確認された。これにより人工弁構造的劣化(structural valve deterioration; SVD)と診断され,機械弁(ATS AP360 22 mm)への再置換手術が実施された。術後経過は良好で,術後21日目に退院した。透析患者では心血管の石灰化や動脈硬化が進行しやすく,より早期にSVDを生じることが報告されている。本症例では術後1年でのTTEにて人工弁位の最大血流速度は2.91 m/秒まで上昇し,術後2年で重症の人工弁狭窄が確認された。透析患者のAVR後には,短期間でのTTEのフォローアップが必要であると考えられた。結論として,透析患者のAVR後のSVDの早期診断には,TTEによる頻繁な経過観察とドプラ指標の変化を見逃さないことが重要である。本症例から得られた知見が,透析患者のAVR後の管理方法の改善に寄与することを期待する。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.24-72