当院で経験したたこつぼ型心筋症と思われる1例と文献的考察

患者は70歳代,男性。高脂血症,高血圧,糖尿病において当院で定期受診をしている。20XX年5月,受診時に6ヶ月前に自宅で転倒した際に胸を椅子に強打し,しばらく胸部痛の持続があったことを訴えた。念のため心電図検査,胸部X線検査,心臓超音波検査と血中心筋マーカー(心筋トロポニンI,CPK,CK-MB)の検査を施行した。心電図で四肢誘導のI,II,III,aVFでT波の陰転化とaVRでT波の陽転化を認め,胸部誘導のV3からV6までT波の陰転化とV4とV5でややST低下を認めた。心電図所見より,たこつぼ型心筋症が疑われたが,心臓超音波検査では左室後壁の肥厚とsigmoid septumを認め,壁運動異...

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Published in医学検査 Vol. 73; no. 3; pp. 549 - 554
Main Authors 笹岡, 悠一, 大西, 秀典, 吉田, 和文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.07.2024
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.23-70

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Summary:患者は70歳代,男性。高脂血症,高血圧,糖尿病において当院で定期受診をしている。20XX年5月,受診時に6ヶ月前に自宅で転倒した際に胸を椅子に強打し,しばらく胸部痛の持続があったことを訴えた。念のため心電図検査,胸部X線検査,心臓超音波検査と血中心筋マーカー(心筋トロポニンI,CPK,CK-MB)の検査を施行した。心電図で四肢誘導のI,II,III,aVFでT波の陰転化とaVRでT波の陽転化を認め,胸部誘導のV3からV6までT波の陰転化とV4とV5でややST低下を認めた。心電図所見より,たこつぼ型心筋症が疑われたが,心臓超音波検査では左室後壁の肥厚とsigmoid septumを認め,壁運動異常の出現は認めなかった。胸部X線検査は心胸郭比56%で,肺うっ血・胸水貯留や,骨折の所見は認めず,血液検査でも異常を認めなかった。検査時点では胸部症状はなく経過観察となっていた。1年7ヶ月後の心電図検査ではQ波もR波の増高もなく胸部誘導のT波は陽転化し,ST低下も正常へ戻っていた。冠動脈造影などの検査が未実施のため,外傷性の心筋傷害の可能性を否定できないが,類似所見を示す疾患として,たこつぼ型心筋症が考えられた。転倒による胸部打撲との関連を結びつける根拠は示せなかったが,無症状で発症したたこつぼ型心筋症による心電図異常が最も考えられる症例であった。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.23-70