対象肢を視野内へ入れた運動教示は重度半側空間無視を呈する患者の対象肢の標的動作の発現回数を増加させるか

重度高次脳機能障害者は,教示した動作に従えないことが少なくない.このような対象者に標的動作の発現が促せた場合,意識レベルや筋力などの身体機能の評価の妥当性や治療に対する動機づけを高めるうえで有効と考えられる.本研究の目的は,非麻痺側下肢の脚伸展運動実施時に対象下肢を視野内に入れて教示することが,脚伸展運動を増加させるか否かについて検討することである.対象者はくも膜下出血を発症した70歳代の男性である.第14病日の理学療法評価では,意識障害と重度の半側空間無視,失語,片麻痺を呈していた.介入は,脚伸展運動を標的動作とし,5回の教示に対する発現回数を測定した.脚伸展運動の教示は口頭指示,ジェスチャ...

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Published in行動リハビリテーション Vol. 5; pp. 31 - 35
Main Authors 中茎, 篤, 近藤, 千雅, 大森, 圭貢, 川名部, 恵理, 最上谷, 拓磨, 佐々木, 祥太郎, 大宮, 一人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 行動リハビリテーション研究会 31.03.2016
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ISSN2186-6449
2758-7924
DOI10.60218/kodoreha.5.0_31

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Summary:重度高次脳機能障害者は,教示した動作に従えないことが少なくない.このような対象者に標的動作の発現が促せた場合,意識レベルや筋力などの身体機能の評価の妥当性や治療に対する動機づけを高めるうえで有効と考えられる.本研究の目的は,非麻痺側下肢の脚伸展運動実施時に対象下肢を視野内に入れて教示することが,脚伸展運動を増加させるか否かについて検討することである.対象者はくも膜下出血を発症した70歳代の男性である.第14病日の理学療法評価では,意識障害と重度の半側空間無視,失語,片麻痺を呈していた.介入は,脚伸展運動を標的動作とし,5回の教示に対する発現回数を測定した.脚伸展運動の教示は口頭指示,ジェスチャー,身体的ガイドの全てを用いる教示Aと,対象下肢を視野内に入れるよう配慮して教示Aを行う教示Bの2通りとした.下肢を視野内に入れるため下肢の位置の調整と他動的な頸部回旋を実施した.教示は,同一日にAとBの両方を行い,教示の順は日替わりとした.その結果,実施された全19セッションで教示Aに比べ教示Bで標的動作の発現回数が多かった.重度の半側空間無視を呈した急性期くも膜下出血患者に対して,対象下肢を視野内に入れた教示は,下肢の標的動作の発現を早める可能性がある.
ISSN:2186-6449
2758-7924
DOI:10.60218/kodoreha.5.0_31