保存的に加療した巨大血腫合併の外傷性肝損傷の1例

症例は10歳の女児.自転車の単独事故で,ハンドル外傷により腹部を受傷した.造影CTで肝臓の巨大血腫と造影剤の漏出を認めたため,血管造影を施行した.肝動脈から出血を認めたため,経カテーテル動脈塞栓術により止血を行った.第3病日に貧血の進行と肝逸脱酵素の上昇があり,エコーで血腫の増大と腹水を認めた.再度造影CTを施行したが,造影剤の漏出はなく,肝実質の造影効果は保たれていた.そのため,再出血および肝コンパートメント症候群の可能性は低いと考えた.輸血と保存的加療により状態は改善し,第32病日に退院した.入院中はエコーと造影CTで血腫の評価を行った.血腫は増大が止まった後,血漿成分が吸収され,次第に血...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 61; no. 2; pp. 185 - 191
Main Authors 豊岡, 晃輔, 金川, 勉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.04.2025
日本小児外科学会
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.61.2_185

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Summary:症例は10歳の女児.自転車の単独事故で,ハンドル外傷により腹部を受傷した.造影CTで肝臓の巨大血腫と造影剤の漏出を認めたため,血管造影を施行した.肝動脈から出血を認めたため,経カテーテル動脈塞栓術により止血を行った.第3病日に貧血の進行と肝逸脱酵素の上昇があり,エコーで血腫の増大と腹水を認めた.再度造影CTを施行したが,造影剤の漏出はなく,肝実質の造影効果は保たれていた.そのため,再出血および肝コンパートメント症候群の可能性は低いと考えた.輸血と保存的加療により状態は改善し,第32病日に退院した.入院中はエコーと造影CTで血腫の評価を行った.血腫は増大が止まった後,血漿成分が吸収され,次第に血球成分が溶解して縮小していった.巨大血腫の経時的な画像変化を観察できたことは,侵襲的治療が必要になった際の適切なタイミングを計る一助になると考える.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.61.2_185