野生動物救護施設で働く獣医師 ~神奈川県における野生動物救護について

神奈川県では,野生動物(鳥類および哺乳類)の救護業務を自然環境保全センターの他,横浜市立の3動物園,川崎市立動物公園,神奈川県下の各獣医師会にも委託して行っている。県内で救護される野生動物は,毎年2,000点(頭・羽)前後(全国の総救護点数の約15%),種数は約120種にのぼり,希少な種の救護例もある。救護原因の多くは,建造物などへの衝突,猫による被害,交通事故,誤認保護など,人間生活に深く関わっている。野生復帰率は約3割で,復帰後の生息状況を探るため,東京農業大学と共同で行ったタヌキの調査では,安定した環境に落ち着くまでに,復帰後約3か月を要することなどが明らかになった。神奈川県では,野生動...

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Published inJapanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 Vol. 17; no. 1; pp. 7 - 8
Main Author 加藤, 千晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本野生動物医学会 30.03.2012
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ISSN1342-6133
2185-744X
DOI10.5686/jjzwm.17.7

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Summary:神奈川県では,野生動物(鳥類および哺乳類)の救護業務を自然環境保全センターの他,横浜市立の3動物園,川崎市立動物公園,神奈川県下の各獣医師会にも委託して行っている。県内で救護される野生動物は,毎年2,000点(頭・羽)前後(全国の総救護点数の約15%),種数は約120種にのぼり,希少な種の救護例もある。救護原因の多くは,建造物などへの衝突,猫による被害,交通事故,誤認保護など,人間生活に深く関わっている。野生復帰率は約3割で,復帰後の生息状況を探るため,東京農業大学と共同で行ったタヌキの調査では,安定した環境に落ち着くまでに,復帰後約3か月を要することなどが明らかになった。神奈川県では,野生動物救護に多くの市民が関わっている。センターには約250名のボランティアが登録され,年間延活動人数は千数百人に達している。学校などでの環境教育,普及啓発活動なども活発で,これら活動の中核を「NPO法人野生動物救護の会」が担っている。これからの野生動物救護(「救護」ではなく,むしろ「復帰」)は,個体の救命に留まらず,市民に向けた普及啓発,救護技術の集積や向上,救護データの蓄積と分析,環境モニタリングへの活用から保全医学へ向けたアプローチなど,自然環境保全や生物多様性の保全に貢献できる取組みが,より一層求められている。それらの実現のためにも,市民,NGO・NPO,行政,大学,研究機関などの連携が,一層欠かせないものになってくると考えられる。
ISSN:1342-6133
2185-744X
DOI:10.5686/jjzwm.17.7