日本人の遺伝性腫瘍に関するエビデンスの構築 −研究から医療への展開

I. はじめに 網膜芽細胞腫の原因遺伝子であるRB1遺伝子が1988年にクローニングされてから, 20年以上が経過している. この間に約70種類以上の遺伝性腫瘍の原因遺伝子が発見され, RET(多発性内分泌腺腫症II型:MENII, 1985年), APC(家族性大腸腺腫症, 1991年), BRCA1(遺伝性乳がん卵巣がん, 1994年)など, 日本人が発見した重要な遺伝子も少なくない. しかし, 遺伝性腫瘍の原因遺伝子の遺伝子検査はいまだに保険診療として臨床応用されていないのが現状である. 本稿では, 日本におけるがんの遺伝子検査の歴史的経緯と今後の展望について述べる. II. がんの遺伝...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in家族性腫瘍 Vol. 10; no. 2; pp. 54 - 58
Main Author 菅野, 康吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家族性腫瘍学会 2010
一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
The Japanese Society for Hereditary Tumors
Online AccessGet full text
ISSN1346-1052
2189-6674
DOI10.18976/jsft.10.2_54

Cover

More Information
Summary:I. はじめに 網膜芽細胞腫の原因遺伝子であるRB1遺伝子が1988年にクローニングされてから, 20年以上が経過している. この間に約70種類以上の遺伝性腫瘍の原因遺伝子が発見され, RET(多発性内分泌腺腫症II型:MENII, 1985年), APC(家族性大腸腺腫症, 1991年), BRCA1(遺伝性乳がん卵巣がん, 1994年)など, 日本人が発見した重要な遺伝子も少なくない. しかし, 遺伝性腫瘍の原因遺伝子の遺伝子検査はいまだに保険診療として臨床応用されていないのが現状である. 本稿では, 日本におけるがんの遺伝子検査の歴史的経緯と今後の展望について述べる. II. がんの遺伝子診断の歴史的経緯 筆者は国立がんセンター病院に在職していた1990年代初頭からがんの遺伝子検査の臨床応用について研究を行ってきた. その成果を1994年に「固形腫瘍のDNA診断」として高度先進医療に申請し承認されている1).
ISSN:1346-1052
2189-6674
DOI:10.18976/jsft.10.2_54