陽子線治療―頭頸部癌治療における陽子線治療の現状と可能性について

放射線治療は臓器およびその機能温存の観点から, 外科切除療法 (+再建術) と並んで頭頸部癌に対する根治的な治療として確立している. しかし, 頭頸部癌に対する放射線治療では, 局所制御がその遠隔成績や有害事象治療後の生活の質 (QOL) に大きく影響するため, 局所進行癌を含めて有害事象を低減して局所制御率を向上することは重要である. 陽子線治療は物質中で粒子が停止する直前の部位でエネルギー損失はピークに達して, 吸収線量がピークになるブラッグピークという優れた物理学的な特性から, 重粒子線治療と共に鼻・副鼻腔や頭蓋底などの脳幹や視神経などのリスク臓器が近接する腫瘍の根治的な治療法として適応...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 122; no. 7; pp. 947 - 953
Main Author 秋元, 哲夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.07.2019
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.122.947

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Summary:放射線治療は臓器およびその機能温存の観点から, 外科切除療法 (+再建術) と並んで頭頸部癌に対する根治的な治療として確立している. しかし, 頭頸部癌に対する放射線治療では, 局所制御がその遠隔成績や有害事象治療後の生活の質 (QOL) に大きく影響するため, 局所進行癌を含めて有害事象を低減して局所制御率を向上することは重要である. 陽子線治療は物質中で粒子が停止する直前の部位でエネルギー損失はピークに達して, 吸収線量がピークになるブラッグピークという優れた物理学的な特性から, 重粒子線治療と共に鼻・副鼻腔や頭蓋底などの脳幹や視神経などのリスク臓器が近接する腫瘍の根治的な治療法として適応され, その有効性がシステマティックレビューなどで評価され一部の頭頸部癌 (咽頭の扁平上皮癌を除く非扁平上皮癌) では2018年4月から保険収載されている. さらに, 照射法やその技術開発ではペンシル状の細いビームを用いるスキャニング照射法とその発展型である強度変調陽子線治療 (IMPT) なども臨床で使用されつつあり, さらなる治療成績向上や有害事象低減に加えて, 現在は強度変調放射線治療 (IMRT) が標準治療である局所進行頭頸部扁平上皮癌への適応拡大も期待できる.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.122.947