栄養摂取方法の違いが療養型病院の入院患者における発熱および炎症反応に及ぼす影響

多くの高齢者を抱える慢性期療養型の病院では,誤嚥性肺炎が問題視されている.誤嚥性肺炎の諸症状に発熱や炎症反応があることから,食事を経口摂取している患者では,発熱や炎症反応が上昇した際に誤嚥性肺炎が疑われ禁食となる場合がある.しかしながら,これまでに療養型病院における食事の経口摂取の中断による非経口摂取状況の長期化が,発熱や炎症反応の改善予防に有効かどうかは不明であった.本研究の目的は,長期間の経口摂取と非経口摂取による栄養摂取方法の違いが,発熱および炎症反応に及ぼす影響を後ろ向き研究により明らかにすることであった. 対象は,療養型病院に入院している経口摂取患者23名(Oral Nutritio...

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Published in日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 22; no. 3; pp. 260 - 266
Main Authors 山口, 太一, 東郷, 将成, 皆川, 夏樹, 伊藤, 真義, 佐藤, 雅俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 31.12.2018
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.22.3_260

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Summary:多くの高齢者を抱える慢性期療養型の病院では,誤嚥性肺炎が問題視されている.誤嚥性肺炎の諸症状に発熱や炎症反応があることから,食事を経口摂取している患者では,発熱や炎症反応が上昇した際に誤嚥性肺炎が疑われ禁食となる場合がある.しかしながら,これまでに療養型病院における食事の経口摂取の中断による非経口摂取状況の長期化が,発熱や炎症反応の改善予防に有効かどうかは不明であった.本研究の目的は,長期間の経口摂取と非経口摂取による栄養摂取方法の違いが,発熱および炎症反応に及ぼす影響を後ろ向き研究により明らかにすることであった. 対象は,療養型病院に入院している経口摂取患者23名(Oral Nutrition: ON群)と非経口摂取患者58名(Enteral Nutrition: EN群)であった.両群は,体温および発熱日数の生理学的指標,WBCおよびCRPの生化学的指標をカルテより抽出した.抽出期間は抽出時点より6カ月間であった. 抽出の結果,生理学的指標である体温および発熱日数は,EN群がON群よりも有意に高値であった(p<0.01).生化学的指標であるWBCおよびCRPにおいても,EN群がON群よりも有意な高値であった(p<0.05). EN群は,ON群よりも体温高値および発熱日数が多く,炎症反応指標が高値を示した.これらのことから,口腔を介さない長期間の非経口摂取状況は,発熱や炎症反応の改善に有効ではないと考えられる.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.22.3_260