痛みと情動

「はじめに」「病は気から」という古くからのことわざにあるように, 我々の体の状態と感情・情動の関係は切り離すことはできない. 我々のグループは神経損傷モデルマウスの行動を通して, 痛みに長期にさらされているうちに不安行動, 抑うつ状態がひきおこされること, すなわち, 痛みが病的な情動の変化を起こすことを動物実験で世界に先駆けて明らかにした33). 「痛み」を考える上でも, 古くは第2次世界大戦中の負傷した兵士がその痛みに対しモルヒネを始めとした鎮痛薬を欲しない場合があったとの報告がある3). 高度なストレスにさらされることによってヒトは痛みに対する不快な情動が起こらなくなるという顕著な報告で...

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Published inPAIN RESEARCH Vol. 25; no. 4; pp. 199 - 209
Main Authors 眞下, 節, 中江, 文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本疼痛学会 10.12.2010
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ISSN0915-8588
2187-4697
DOI10.11154/pain.25.199

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Summary:「はじめに」「病は気から」という古くからのことわざにあるように, 我々の体の状態と感情・情動の関係は切り離すことはできない. 我々のグループは神経損傷モデルマウスの行動を通して, 痛みに長期にさらされているうちに不安行動, 抑うつ状態がひきおこされること, すなわち, 痛みが病的な情動の変化を起こすことを動物実験で世界に先駆けて明らかにした33). 「痛み」を考える上でも, 古くは第2次世界大戦中の負傷した兵士がその痛みに対しモルヒネを始めとした鎮痛薬を欲しない場合があったとの報告がある3). 高度なストレスにさらされることによってヒトは痛みに対する不快な情動が起こらなくなるという顕著な報告で興味深い. IASPの痛みの定義は, “Pain is an unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage. ”となっており, emotional(情動的)な側面の重要性を銘記している.
ISSN:0915-8588
2187-4697
DOI:10.11154/pain.25.199