口之島牛集団における経済形質、遺伝性疾患および毛色に関連する遺伝子の対立遺伝子頻度とその分布
口之島牛は鹿児島県トカラ列島の口之島において、明治から大正期にかけて放牧されていた日本在来牛が野生化した日本で唯一の野生化牛の集団である。これまでに、我が国の主要な肉用牛である黒毛和種や日本在来牛といわれる見島牛等においては経済形質や遺伝性疾患に関する種々の遺伝子の遺伝子頻度と分布は明らかにされているが、口之島牛におけるそれらに関する報告は少ない。そこで、本研究では口之島牛の集団における経済形質、遺伝性疾患および毛色に関与する遺伝子の対立遺伝子頻度と分布を調べ、それらを黒毛和種および見島牛の集団と比較することで、口之島牛の集団の遺伝的特徴について検討した。32 頭の口之島牛より採取されたDNA...
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Published in | 動物遺伝育種研究 Vol. 42; no. 1; pp. 11 - 19 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本動物遺伝育種学会
2014
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ISSN | 1345-9961 1884-3883 |
DOI | 10.5924/abgri.42.11 |
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Summary: | 口之島牛は鹿児島県トカラ列島の口之島において、明治から大正期にかけて放牧されていた日本在来牛が野生化した日本で唯一の野生化牛の集団である。これまでに、我が国の主要な肉用牛である黒毛和種や日本在来牛といわれる見島牛等においては経済形質や遺伝性疾患に関する種々の遺伝子の遺伝子頻度と分布は明らかにされているが、口之島牛におけるそれらに関する報告は少ない。そこで、本研究では口之島牛の集団における経済形質、遺伝性疾患および毛色に関与する遺伝子の対立遺伝子頻度と分布を調べ、それらを黒毛和種および見島牛の集団と比較することで、口之島牛の集団の遺伝的特徴について検討した。32 頭の口之島牛より採取されたDNAサンプルを用い、脂肪酸組成や枝肉形質に関与することが報告されているNCAPG、FASN、SCD およびSREBP-1 遺伝子、遺伝性疾患の第XI 因子欠乏症の原因遺伝子であるF11 、毛色に関与するMC1R 遺伝子についてPCR 法あるいはPCR-RFLP法により遺伝子型判定を行い、黒毛和種および見島牛の集団の結果と比較した。その結果、NCAPG 遺伝子については、黒毛和種ではG およびT の両対立遺伝子が検出されたのに対し、口之島牛と見島牛ではT に固定され、FASN 遺伝子については、黒毛和種ではTW およびAR の両対立遺伝子が検出されたのに対し、口之島牛ではAR に、見島牛ではTW に固定されていた。SCD 遺伝子については、黒毛和種、口之島牛、見島牛のいずれでもA とV の両対立遺伝子が検出され、SREBP-1 遺伝子については、黒毛和種および見島牛ではS およびL の両対立遺伝子が検出されたのに対し、口之島牛ではL に固定されていた。F11 遺伝子については、黒毛和種では(+) および(-) の両対立遺伝子が検出されたのに対し、口之島牛、見島牛では(+) に固定され、MC1R 遺伝子については、黒毛和種ではED およびE+ 対立遺伝子が検出され、口之島牛ではE+ およびe 対立遺伝子が検出され、見島牛ではE+ 対立遺伝子に固定されていた。これらの結果より、口之島牛は他のウシの集団と地理的に隔離された環境で、小さな集団として維持されてきたこと等の理由により、黒毛和種や見島牛とは異なる遺伝的特徴を持つ集団を形成していると考えられた。 |
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ISSN: | 1345-9961 1884-3883 |
DOI: | 10.5924/abgri.42.11 |