高解像度マノメトリーによる評価に基づいた嚥下訓練が有効であった1 例

【緒言】左延髄梗塞により摂食嚥下障害を呈した1 例に対し,高解像度マノメトリー(high-resolution manometry:HRM)により詳細な病態を捉え,改善の過程を客観的に評価した.さらに,前舌保持嚥下法,努力嚥下,メンデルソン手技の効果についてもHRM で確認し,より適切な訓練法の選択ができた症例を経験したので報告する.【症例】40 代男性.左椎骨動脈解離性動脈瘤に対して,コイル塞栓術を施行した.術後に左眼瞼下垂,摂食嚥下障害が出現し左延髄梗塞を認めた.【経過】2 病日の嚥下内視鏡検査では,嚥下反射が惹起せず経口摂取困難であり,臨床的重症度分類(dysphagia severit...

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Published in日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 26; no. 2; pp. 140 - 146
Main Authors 蛭牟田, 誠, 大橋, 美穂, 本多, 舞子, 青柳, 陽一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 31.08.2022
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.26.2_140

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Summary:【緒言】左延髄梗塞により摂食嚥下障害を呈した1 例に対し,高解像度マノメトリー(high-resolution manometry:HRM)により詳細な病態を捉え,改善の過程を客観的に評価した.さらに,前舌保持嚥下法,努力嚥下,メンデルソン手技の効果についてもHRM で確認し,より適切な訓練法の選択ができた症例を経験したので報告する.【症例】40 代男性.左椎骨動脈解離性動脈瘤に対して,コイル塞栓術を施行した.術後に左眼瞼下垂,摂食嚥下障害が出現し左延髄梗塞を認めた.【経過】2 病日の嚥下内視鏡検査では,嚥下反射が惹起せず経口摂取困難であり,臨床的重症度分類(dysphagia severity scale:DSS)は1 であった.11 病日に嚥下造影検査とHRM を実施し,咽頭内圧の低下と上部食道括約筋(upper esophageal sphincter:UES)弛緩時間の短縮を認めた.23病日には咽頭内圧,UES 弛緩時間がやや改善した.同日,HRM により前舌保持嚥下法,努力嚥下,メンデルソン手技の効果を検討した.前舌保持嚥下法,努力嚥下,メンデルソン手技のすべてにおいて唾液嚥下よりも咽頭収縮積分値が高値であった.メンデルソン手技ではUES 弛緩時間の延長も認めた.これらの所見を患者に説明したうえで,各嚥下手技を練習した.39 病日には,咽頭収縮積分値のさらなる向上を認め,DSS は6 となった.【考察】HRM による嚥下評価を行うことで,詳細に咽頭内圧,UES の病態生理を捉えることができた.さらに,嚥下手技の効果をHRM で確認したことで,より適切な訓練法を選択できた.HRM は,摂食嚥下リハビリテーションを行ううえで適切な訓練法の選択に繋がることが示唆された.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.26.2_140