難聴高齢者と暮らす配偶者が経験するコミュニケーション上の困難
「I. 緒言」 高齢者の多くは, 加齢による聴覚機能の生理的変化が影響し難聴をきたしている. 内田らによる疫学研究では, 2010年時点における65歳以上高齢者2937万人の内1500万人超に難聴があると推計されている. 難聴の高齢者(以下難聴高齢者という)は, 聞こえの低下の認知に関連した精神的健康度の低下が起こりやすいこと, また難聴による周囲とのコミュニケーションの問題から社会的孤立へ, さらには認知症の発症との関連性も報告されている. 加齢性難聴は, 他人から聞こえの低下を指摘された場合のみならず高齢者自身が自覚した場合でも, 「スティグマ」を感じるためか「否定」という対処を行う傾向に...
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Published in | 日本健康学会誌 Vol. 88; no. 2; pp. 60 - 67 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本健康学会
31.03.2022
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ISSN | 2432-6712 2432-6720 |
DOI | 10.3861/kenko.88.2_60 |
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Summary: | 「I. 緒言」 高齢者の多くは, 加齢による聴覚機能の生理的変化が影響し難聴をきたしている. 内田らによる疫学研究では, 2010年時点における65歳以上高齢者2937万人の内1500万人超に難聴があると推計されている. 難聴の高齢者(以下難聴高齢者という)は, 聞こえの低下の認知に関連した精神的健康度の低下が起こりやすいこと, また難聴による周囲とのコミュニケーションの問題から社会的孤立へ, さらには認知症の発症との関連性も報告されている. 加齢性難聴は, 他人から聞こえの低下を指摘された場合のみならず高齢者自身が自覚した場合でも, 「スティグマ」を感じるためか「否定」という対処を行う傾向にある. 実際に安田らは, 聴力検査後に補聴器装用レベルの難聴高齢者に対して補聴器装用を勧めたところ, その8割が拒否したと述べている. 難聴の自覚のない, あるいは難聴を指摘されてもなお「否定」している高齢者に対しては, 難聴の事実の認知あるいは受容を促す援助と共に, 難聴高齢者がコミュニケーションの障害により孤立に陥らないような意図的なコミュニケーション対策が求められる. |
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ISSN: | 2432-6712 2432-6720 |
DOI: | 10.3861/kenko.88.2_60 |