緒方洪庵の壮年期使用薬箱収蔵生薬「撤尓」の基原と史的深化

「1. 緒論」緒方洪庵(以下, 洪庵, 1810~63年)は, 江戸時代幕末期に適塾を主宰した蘭学者・蘭方医である. 洪庵が往診に携行したとされる薬箱は壮年期と晩年期の2点が現存するが, 壮年期のものは1996年, 洪庵曾孫(洪庵六男収二郎の孫)の緒方裁吉氏から大阪大学に寄贈された. 本薬箱には, 丸薬製剤(10袋)並びに生薬名の記された薬袋(60袋)が収納されている. 薬袋のサイズは引出ごとに異なり, 3段目24袋, 4段目22袋, 5段目14袋で, 特に3段目はすべてに内容物が残存していた. 洪庵の薬箱およびその内容物は貴重な医療文化財であり, 非破壊的解析を行う必要がある. 2013年,...

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Published in薬史学雑誌 Vol. 55; no. 1; pp. 21 - 28
Main Authors 善利, 佑記, 髙浦(島田), 佳代子, 髙橋, 京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬史学会 2020
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ISSN0285-2314
2435-7529
DOI10.34531/jjhp.55.1_21

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Summary:「1. 緒論」緒方洪庵(以下, 洪庵, 1810~63年)は, 江戸時代幕末期に適塾を主宰した蘭学者・蘭方医である. 洪庵が往診に携行したとされる薬箱は壮年期と晩年期の2点が現存するが, 壮年期のものは1996年, 洪庵曾孫(洪庵六男収二郎の孫)の緒方裁吉氏から大阪大学に寄贈された. 本薬箱には, 丸薬製剤(10袋)並びに生薬名の記された薬袋(60袋)が収納されている. 薬袋のサイズは引出ごとに異なり, 3段目24袋, 4段目22袋, 5段目14袋で, 特に3段目はすべてに内容物が残存していた. 洪庵の薬箱およびその内容物は貴重な医療文化財であり, 非破壊的解析を行う必要がある. 2013年, 高橋らは生薬の全容を報告したが, 詳細な基原生物鑑別は途上にある. 中でも3段目の「撤尓」と記載された薬袋には, 径2-3mm, 長さ20-50mmの円柱形の生薬が約7g残存する.
ISSN:0285-2314
2435-7529
DOI:10.34531/jjhp.55.1_21