根面う蝕管理のためのフッ化物応用について フッ化ジアンミン銀,フッ化物バニッシュを中心に

根面う蝕は,加齢による歯槽骨の退縮や歯周疾患,不適切なブラッシング,唾液分泌量の減少などで発症および進行リスクが高まる.また,高齢者の現在歯数増加,歯周疾患罹患率の増加によって,今後も増加が予想される.根面う蝕は,視診,触診により活動性と非活動性に分類でき,活動性う蝕はフッ化物の応用など非侵襲的な処置で非活動性う蝕へのコントロールが可能である. フッ化ジアンミン銀(SDF: Silver Diamine Fluoride)は55,000 ppmという高濃度のフッ化物を含有するう蝕予防・進行抑制剤である.塗布は年1~2回で,費用対効果が高い.SDFの欠点であるう蝕病変の黒変軽減のため,ヨウ化カリ...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 72; no. 3; pp. 152 - 157
Main Authors 宮本, 茜, 葭原, 明弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 2022
日本口腔衛生学会
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.72.3_152

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Summary:根面う蝕は,加齢による歯槽骨の退縮や歯周疾患,不適切なブラッシング,唾液分泌量の減少などで発症および進行リスクが高まる.また,高齢者の現在歯数増加,歯周疾患罹患率の増加によって,今後も増加が予想される.根面う蝕は,視診,触診により活動性と非活動性に分類でき,活動性う蝕はフッ化物の応用など非侵襲的な処置で非活動性う蝕へのコントロールが可能である. フッ化ジアンミン銀(SDF: Silver Diamine Fluoride)は55,000 ppmという高濃度のフッ化物を含有するう蝕予防・進行抑制剤である.塗布は年1~2回で,費用対効果が高い.SDFの欠点であるう蝕病変の黒変軽減のため,ヨウ化カリウム(KI)の併用について研究が進んでいる.また,フッ化物バニッシュは22,600 ppmNaFを4~6時間停滞させ,う蝕予防効果を発揮する塗布材料である.う蝕予防や進行抑制に関して十分なエビデンスがあることから,欧米諸国では小児から高齢者に至るまで,積極的に応用されている.国内では,象牙質知覚過敏鈍麻剤として認可されているが,有効性を示す調査が複数存在することから今後根面う蝕予防や根面う蝕進行抑制へと使用用途が広がっていくことを期待する.SDF,フッ化物バニッシュは操作が簡便で,介護が必要な高齢者や,訪問診療での利用にも適している.多くの年代に渡り,セルフケアに加え,プロフェッショナルケアを充実させることで,今後必要性が増加することが予想される根面う蝕管理に対応する必要があると考える.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.72.3_152