乳房に数個のソフトボール大の腫瘤を認めた牛伝染性リンパ腫の1症例

牛伝染性リンパ腫(enzootic bovine leucosis:EBL)は,国内において増加傾向にあり,清浄国を除く世界中で問題になっている.EBLの原因は,牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus: BLV)であり,病理学的特徴は,多形型B細胞性リンパ腫である.本症例は宮崎県内のと畜場に搬入され,解体時に乳房に数個のソフトボール大の腫瘤を認めたため,一時保留処分となった.その後,食肉衛生検査所における病理組織学的検査および抗BLV抗体検査の結果,EBLと診断され全部廃棄処分になった.乳房の腫瘤の由来は肉眼的には不明であったが,病理組織学的検査において,腫瘤組織中に腫瘍...

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Published in産業動物臨床医学雑誌 Vol. 13; no. 1; pp. 8 - 14
Main Authors 谷, 千賀子, 福家, 直幸, 中畑, 新吾, 山口, 良二, 森下, 和広, 田角, 隆行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会・九州沖縄産業動物臨床研究会 02.05.2022
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ISSN1884-684X
2187-2805
DOI10.4190/jjlac.13.8

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Summary:牛伝染性リンパ腫(enzootic bovine leucosis:EBL)は,国内において増加傾向にあり,清浄国を除く世界中で問題になっている.EBLの原因は,牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus: BLV)であり,病理学的特徴は,多形型B細胞性リンパ腫である.本症例は宮崎県内のと畜場に搬入され,解体時に乳房に数個のソフトボール大の腫瘤を認めたため,一時保留処分となった.その後,食肉衛生検査所における病理組織学的検査および抗BLV抗体検査の結果,EBLと診断され全部廃棄処分になった.乳房の腫瘤の由来は肉眼的には不明であったが,病理組織学的検査において,腫瘤組織中に腫瘍細胞の浸潤とリンパ節の髄洞に相当する部位を認めたことから,乳房リンパ節が腫瘍細胞の浸潤によって腫大したものと思われた.また乳房腫瘤内にCD20,IgM抗体陽性のB細胞が浸潤し,核分裂像が散見された.EBLの診断において,本例のように臨床所見だけでは判断ができないため,血液検査,ウイルスの抗体検査・PCR検査,剖検所見,病理組織学的所見の全ての総合的な診断が,極めて重要であることを再確認した.
ISSN:1884-684X
2187-2805
DOI:10.4190/jjlac.13.8