学童期の子どものう蝕および歯みがき習慣と家庭・生活状況との関連についての一考察

う蝕は個人的な要因だけでなく,社会的に恩恵を受けにくい状況によっても発生すると考えられている.そこで,本研究は,学童期にあたる小学5年生のう蝕および歯みがき習慣と,家庭・生活状況との関連を検討することを目的として行った.  2017年に埼玉県は子どもの生活状況を把握するために「子どもの生活調査」を実施した.その調査のうち,3,716組の保護者とその子どもの質問票への回答項目を本研究の分析対象とした.分析では,χ2 検定およびロジスティック回帰分析を用い,子どものう蝕と歯みがき習慣に関連する要因についての検討を行った. その結果,子どもがう蝕を多く有することや歯みがき習慣がないことには,ライフラ...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 72; no. 1; pp. 34 - 41
Main Authors 中山, 真理, 植野, 正之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 01.01.2022
日本口腔衛生学会
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.72.1_34

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Summary:う蝕は個人的な要因だけでなく,社会的に恩恵を受けにくい状況によっても発生すると考えられている.そこで,本研究は,学童期にあたる小学5年生のう蝕および歯みがき習慣と,家庭・生活状況との関連を検討することを目的として行った.  2017年に埼玉県は子どもの生活状況を把握するために「子どもの生活調査」を実施した.その調査のうち,3,716組の保護者とその子どもの質問票への回答項目を本研究の分析対象とした.分析では,χ2 検定およびロジスティック回帰分析を用い,子どものう蝕と歯みがき習慣に関連する要因についての検討を行った. その結果,子どもがう蝕を多く有することや歯みがき習慣がないことには,ライフライン支払い困難経験や緊急時に頼れる人がいない,しつけの相談をする人がいない,といった家庭の経済状況や社会状況が影響していることが明らかとなった.さらに,保護者のほめる頻度が少ない養育態度や子どものう蝕,歯の汚れへの憂慮,朝食欠食や栄養バランスを欠いた食生活も関連していた.これらのことから,子どもが育つ家庭の状況や保護者の関わり方によっては,子どもの健康が損なわれる危険性があることが推測された. したがって,小学校高学年の子どものう蝕や歯みがき習慣に取り組む際には,これらの影響を十分に考慮して,子どもが自分自身の健康を考え,歯と身体を大切にする価値観と統制力をもった行動を育てる健康教育を行う必要があると考えられた.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.72.1_34