脊髄小脳変性症の遺伝子型と眼球運動障害についての検討

脊髄小脳変性症(SCD)は,小脳性または脊髄性の運動性失調を主体とする進行性疾患である.運動失調や自律神経症状,ふらつき•めまい•眼球運動障害などの多彩な症状を来す.1993年に異常遺伝子が証明されトリプレット•リピート病の一つであるという概念が確立されて以降,病因遺伝子座の違いによりSCA1,SCA2として次々に同定され,遺伝子学的観点からの分類が確立されるに至った.そうしたジェノタイプから神経耳科学的眼球運動障害をみた報告はまだ少ないないため,今回検討を行うこととした. 対象はSCD患者33名,うち同意を得て遺伝子検査を行ったのは9名であり,SCA3が2名,SCA6が3名,既知の遺伝子異常...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 109; no. 1; pp. 30 - 35
Main Authors 小田, 梨恵, 竹本, 剛, 川井, 元晴, 山下, 裕司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 01.01.2006
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.109.30

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Summary:脊髄小脳変性症(SCD)は,小脳性または脊髄性の運動性失調を主体とする進行性疾患である.運動失調や自律神経症状,ふらつき•めまい•眼球運動障害などの多彩な症状を来す.1993年に異常遺伝子が証明されトリプレット•リピート病の一つであるという概念が確立されて以降,病因遺伝子座の違いによりSCA1,SCA2として次々に同定され,遺伝子学的観点からの分類が確立されるに至った.そうしたジェノタイプから神経耳科学的眼球運動障害をみた報告はまだ少ないないため,今回検討を行うこととした. 対象はSCD患者33名,うち同意を得て遺伝子検査を行ったのは9名であり,SCA3が2名,SCA6が3名,既知の遺伝子異常として同定できなかったのが4名であった.下肢運動失調を表す指標として重症度分類を用い,また眼球運動障害を表す指標として視標追跡検査(ETT)および視運動性眼振パターン(OKP)を用い数値化した.結果としては,従来から外眼筋麻痺による眼球運動制限が注目されていたSCA3のみならず,純粋な小脳失調症状が主体とされていたSCA6においても,下肢運動失調に先行して神経耳科学的眼球運動が重度に障害される傾向にあった. このことより,神経耳科学検査はSCD(とくに本邦に多いとされるSCA3とSCA6)の早期発見のための有用なマーカーとなりうること,また様々な治療に対する効果判定の鋭敏な指標となりうることが示唆された.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.109.30