綜合討論

今回のシンポジウムでは輸血によってウイルス感染が成立することが確定している4種類のウイルスについての日本の現状を報告していただいた. 1. B型肝炎ウイルス(HBV) B型肝炎ウイルスについては, 輸血によるウイルス感染が最も古くから研究されており, 現在では, スクリーニングにより献血中にHBV抗体陽性の検体は輸血用には使用されていない. 従って日本の現状としては, 病院内感染が問題となっている. 院内事務職の人がHBs抗体陽転率が年間0.3%であるのに比較すると, 医師の陽転率が2%であるのは有意に高いと考えられる. 特に透析従事者, 及び歯科医の陽転率は4%を越えていることは, 院内感染...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 31; no. 3; pp. 230 - 231
Main Author 畑中, 正一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1985
日本輸血学会
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ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.31.230

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Summary:今回のシンポジウムでは輸血によってウイルス感染が成立することが確定している4種類のウイルスについての日本の現状を報告していただいた. 1. B型肝炎ウイルス(HBV) B型肝炎ウイルスについては, 輸血によるウイルス感染が最も古くから研究されており, 現在では, スクリーニングにより献血中にHBV抗体陽性の検体は輸血用には使用されていない. 従って日本の現状としては, 病院内感染が問題となっている. 院内事務職の人がHBs抗体陽転率が年間0.3%であるのに比較すると, 医師の陽転率が2%であるのは有意に高いと考えられる. 特に透析従事者, 及び歯科医の陽転率は4%を越えていることは, 院内感染を予防する上で職務上の危険度を考慮しなければならない. 又, 医院によっては注射針を反復使用しているところもあると聞く. 注射針は一回限りの使用で, disposableの針を使うよう(disposalの針でも医院によっては3回使ってから捨てると云うことでは全く意味がないが, )医師の再教育を含めた啓蒙活動を真剣に検討しなければならない. 具体的には血液検査のための採血時に注射針を反復使用する例が多いところに問題がある. 日本の現状でHBVの感染で最大の要因は母児間感染にあると見てよい. 特に母親がHBe抗原陽性のときに, 子供のキャリアーになる確率が最も高い(清水勝博士の報告を参照). こうした例には, 出生後できるだけ早い機会, 例えば数力月以内に, HBVの免疫グロブリンとワクチンを投与することが望ましい. 次世代への感染防止と, キャリアーの発生防止が, HBV汚染地域に入っている日本の現状で, 最優先して取られるべき公衆衛生対策であると考える.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.31.230