高用量シスプラチンを用いた化学放射線同時併用療法における栄養状態の変化に関する検討 ~特に放射線単独療法との違いについて
近年, 進行頭頸部癌に対して臓器温存を目的として化学放射線同時併用療法が多用されているが, この治療の問題点の一つである栄養障害に関して詳細に検討されている報告は少ない. 今回われわれは, 高用量シスプラチン (80mg/m2×3回: 合計240mg/m2 目標) による化学放射線同時併用療法を施行した下咽頭癌26例と, 同時期に放射線単独療法を施行した下咽頭癌26例を対象として, 治療期間中の栄養状態の変化を, 体重変化率, 血清アルブミン, 総リンパ球数, ヘモグロビンにより比較検討した. この中で, 最も信頼性が高い栄養評価指標は体重変化率であり, 治療開始前と比較すると治療終了時点では...
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| Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 115; no. 10; pp. 902 - 909 |
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| Main Authors | , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
2012
日本耳鼻咽喉科学会 |
| Subjects | |
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| ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
| DOI | 10.3950/jibiinkoka.115.902 |
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| Summary: | 近年, 進行頭頸部癌に対して臓器温存を目的として化学放射線同時併用療法が多用されているが, この治療の問題点の一つである栄養障害に関して詳細に検討されている報告は少ない. 今回われわれは, 高用量シスプラチン (80mg/m2×3回: 合計240mg/m2 目標) による化学放射線同時併用療法を施行した下咽頭癌26例と, 同時期に放射線単独療法を施行した下咽頭癌26例を対象として, 治療期間中の栄養状態の変化を, 体重変化率, 血清アルブミン, 総リンパ球数, ヘモグロビンにより比較検討した. この中で, 最も信頼性が高い栄養評価指標は体重変化率であり, 治療開始前と比較すると治療終了時点では, 放射線単独療法群において3.8%, 化学放射線同時併用療法群においては8.1%の減少を認めた. 体重減少率から判断すると化学放射線同時併用療法群においては栄養管理の必要性が示唆されたが, 治療の完遂状況から判断すると有害事象による放射線照射の中断は皆無であり, かつシスプラチン総投与量の中央値は240mg/m2 であり満足できるものであった. また, 栄養摂取方法に関しても, 経管栄養を必要としたのは放射線単独療法群で2例 (7.7%), 化学放射線同時併用療法群で4例 (15.4%) と両群で有意差を認めなかったことより, 少なくとも下咽頭癌症例においては, 化学放射線同時併用療法前の胃瘻造設の有用性は乏しいと思われた. |
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| ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
| DOI: | 10.3950/jibiinkoka.115.902 |