術後高次脳機能障害に関する臨床研究の成果と今後の展望

術後の認知機能変化に関して三つのテーマが注目されている.一つ目は長期の術後高次脳機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)の存在で,最近の研究はその存在に否定的である.しかし,観察中に予後不良のPOCD症例の欠落が起こるため,長期のPOCDの研究の解釈には注意が必要である.二つ目は麻酔管理の早期POCDに与える影響で,脳酸素モニタによる局所脳酸素飽和度(rSO2)の術中低値とPOCDは関連し,rSO2低値の回避がPOCD発生の軽減につながる可能性が示されている.三つ目はpostoperative cognitive improvement(PO...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 38; no. 3; pp. 379 - 392
Main Authors 松本, 美志也, 川並, 俊介, 石田, 和慶, 山下, 敦生, 山下, 理, 森岡, 智之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 15.05.2018
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.38.379

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Summary:術後の認知機能変化に関して三つのテーマが注目されている.一つ目は長期の術後高次脳機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)の存在で,最近の研究はその存在に否定的である.しかし,観察中に予後不良のPOCD症例の欠落が起こるため,長期のPOCDの研究の解釈には注意が必要である.二つ目は麻酔管理の早期POCDに与える影響で,脳酸素モニタによる局所脳酸素飽和度(rSO2)の術中低値とPOCDは関連し,rSO2低値の回避がPOCD発生の軽減につながる可能性が示されている.三つ目はpostoperative cognitive improvement(POCI)で,主に脳塞栓の軽減や日常生活動作の改善が起こる手術(内頸動脈狭窄,心臓,整形外科など)で術後にむしろ認知機能が改善することが報告されている.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.38.379