「周術期自己血輸血の推進」によせて
平成17(2005)年2月18日付けの日本経済新聞掲載記事によれば, 日本赤十字社の調査では, B型肝炎ウイルスが混入した献血血液が検査をすり抜け, 同種血輸血で年間13~17人が感染すると推測されるという. エイズウイルスに関しても, 2年に1人程度同種血輸血により感染する可能性があるとされている. ただし, 2004年以降現在まで, 感染者の報告はない. さらに, C型肝炎でも検査すり抜けの報告がなされている. これは, 献血者が感染した直後でウイルス量が少ない時期に検査をすり抜けてしまうためで, 同種血輸血に伴う感染はごくまれとはいえ, 同種血輸血の安全性の限界を示している. 輸血の安全...
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Published in | 日本臨床麻酔学会誌 Vol. 33; no. 3; p. 349 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床麻酔学会
2013
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0285-4945 1349-9149 |
DOI | 10.2199/jjsca.33.349 |
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Summary: | 平成17(2005)年2月18日付けの日本経済新聞掲載記事によれば, 日本赤十字社の調査では, B型肝炎ウイルスが混入した献血血液が検査をすり抜け, 同種血輸血で年間13~17人が感染すると推測されるという. エイズウイルスに関しても, 2年に1人程度同種血輸血により感染する可能性があるとされている. ただし, 2004年以降現在まで, 感染者の報告はない. さらに, C型肝炎でも検査すり抜けの報告がなされている. これは, 献血者が感染した直後でウイルス量が少ない時期に検査をすり抜けてしまうためで, 同種血輸血に伴う感染はごくまれとはいえ, 同種血輸血の安全性の限界を示している. 輸血の安全性を向上させるという点で, 周術期の自己血輸血は極めて重要といえる. このため, 近年, 日本自己血輸血学会では, 学会認定・自己血輸血看護師制度を立ち上げ, さらなる自己血輸血の普及に努めている. 本シンポジウムでは, 自己血輸血の3方式, 貯血式, 希釈式, 回収式に加え, 認定看護師制度についても, それぞれのプロフェッショナルに, 施行方法および有用性について述べていただいた. 今回, 演者の中から, 最も普及している自己血輸血法である貯血式と回収式について講演された2名の先生からご寄稿いただき, 玉井先生は貯血式の安全性と有用性について, 樋口先生は回収式の施行方法および適応について紹介くださっている. 弘前大学医学部附属病院では, 貯血式, 回収式のほかに, 希釈式自己血輸血を全身麻酔手術症例の10~12%で施行しており, 2008年のデータでは, 出血量が2,000g未満では93%, 2,000~3,000gでは33%, 3,000~4,000gでは43%(7名中3名), 4,000g以上では25%(4名中1名)で, 術後も含めて同種血輸血を回避することができた. よって, 自己血輸血3法を組み合わせることで, かなり同種血輸血を回避できることがわかる. 寄稿論文が, 本邦における今後の周術期自己血輸血の推進の一助となることを期待したい. |
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ISSN: | 0285-4945 1349-9149 |
DOI: | 10.2199/jjsca.33.349 |