「挿管不可,換気不可!“最終手段”は本当に役立つか?」によせて
全身麻酔の安全性は十分に達成されているが, 今でもまれながら重篤な合併症が起こることがある. そして, その最大の原因は気道確保に関するものと判明している. 全身麻酔の導入後に"挿管不可, 換気不可"状態になった場合, 低酸素血症などにより, 直ちに致死的となる危険性がある. そのため, 日本麻酔科学会を含む複数の学会, 団体がそのような危機的状態における適切な気道確保法に関するガイドラインを提示している. これらのガイドラインでの対処法の大筋は一致しており, 麻酔の導入後にフェイスマスクによる換気が困難で十分な酸素化ができない場合, "レスキュー"器具...
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| Published in | 日本臨床麻酔学会誌 Vol. 37; no. 4; p. 475 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本臨床麻酔学会
2017
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0285-4945 1349-9149 |
| DOI | 10.2199/jjsca.37.475 |
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| Summary: | 全身麻酔の安全性は十分に達成されているが, 今でもまれながら重篤な合併症が起こることがある. そして, その最大の原因は気道確保に関するものと判明している. 全身麻酔の導入後に"挿管不可, 換気不可"状態になった場合, 低酸素血症などにより, 直ちに致死的となる危険性がある. そのため, 日本麻酔科学会を含む複数の学会, 団体がそのような危機的状態における適切な気道確保法に関するガイドラインを提示している. これらのガイドラインでの対処法の大筋は一致しており, 麻酔の導入後にフェイスマスクによる換気が困難で十分な酸素化ができない場合, "レスキュー"器具としてラリンジアルマスクを代表とする声門上器具を挿入して換気を試みるべきとしている. そして声門上器具が無効な場合には, "最終手段"として観血的気道確保をすべきことになっている. しかし, 声門上器具の挿入・換気, あるいは観血的気道確保が成功するとは限らない. また器具間で成功率に差があるのか, どのような状況でこれらの器具の挿入, 換気が困難となるのかが未だに明らかにされていないなどの問題点がある. 今回のシンポジウムにおいて, "挿管不可, 換気不可"状態における声門上器具および観血的気道確保法の信頼性および限界点について検討することとした. 本誌では, そのうち3名の演者の方々に内容をまとめていただいた. はじめに昭和大学医学部麻酔科の上嶋浩順先生に, 「声門上器具の限界と問題点」について述べていただき, それに続き私が「緊急観血的気道確保の問題点」について紹介した. 最後に和歌山県立医科大学附属病院医療安全推進部・麻酔科の水本一弘先生に, 「外科的輪状甲状膜切開の問題点」として, 実際に"最終手段"としての外科的輪状甲状間膜穿刺, 切開が可能かどうかを含めて解説していただいた. このシンポジウムを契機に, 危機的気道確保困難に関して, より適切で実現可能な対応策の確立について, より活発な検討が行われることを望むばかりである. |
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| ISSN: | 0285-4945 1349-9149 |
| DOI: | 10.2199/jjsca.37.475 |