WS5-2 炎症制御に関わる分子異常による慢性炎症と免疫不全症

  免疫不全症とは自己と非自己を区別することができなくなる病態であり,外来からの病原体を攻撃できなくなるために易感染性を示すことを主たる特徴とするが,その他にも悪性腫瘍,アレルギー,自己炎症,自己免疫を高頻度に合併する.原発性免疫不全症は免疫に関わる分子の異常によって生じるが,300以上の疾患が知られ,分子病態に応じて8つあるいは9つに分類されている.そのうち自己炎症性疾患は2000年以降に明らかになった疾患概念であり,全身性炎症が間欠的あるいは持続的にみられる.そのほとんどで原因遺伝子が同定されているが,裏を返せば原因遺伝子が明らかとなった炎症性疾患が自己炎症性疾患に分類されているといっても...

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Bibliographic Details
Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 40; no. 4; p. 270b
Main Author 金兼, 弘和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2017
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.40.270b

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Summary:  免疫不全症とは自己と非自己を区別することができなくなる病態であり,外来からの病原体を攻撃できなくなるために易感染性を示すことを主たる特徴とするが,その他にも悪性腫瘍,アレルギー,自己炎症,自己免疫を高頻度に合併する.原発性免疫不全症は免疫に関わる分子の異常によって生じるが,300以上の疾患が知られ,分子病態に応じて8つあるいは9つに分類されている.そのうち自己炎症性疾患は2000年以降に明らかになった疾患概念であり,全身性炎症が間欠的あるいは持続的にみられる.そのほとんどで原因遺伝子が同定されているが,裏を返せば原因遺伝子が明らかとなった炎症性疾患が自己炎症性疾患に分類されているといってもよいかもしれない.また自己炎症性疾患に分類されていない原発性免疫不全症においても時に自己炎症性疾患様の病態を合併することがある.ここでは家族性ベーチェット病として同定されたA20ハプロ不全がベーチェット病に限らずさまざまな自己炎症性疾患を合併し,時に自己免疫疾患を発症することを紹介する.またEBウイルスに対する易感受性を示し,免疫制御異常に分類されるX連鎖リンパ増殖症候群2型であるXIAP欠損症は高頻度に炎症性腸疾患を合併しうる.その病態と治療戦略についても紹介する.自己炎症性疾患は免疫制御に関わる分子の異常によって生じる疾患であり,原因遺伝子の同定ならびに分子病態の理解は難治性炎症の制御に役立つと考えられる.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.40.270b