痛みと不安・抑うつ気分にともなう咬合感覚の変調
咬合感覚は顎関節症患者における疼痛症状ならびに精神心理的要因によっても変調することが考えられる.そこで, 本研究では顎関節雑音, 顎関節運動痛, 顎運動困難などの顎関節症症状と咬合感覚に関するNumerical Rating Scale (NRS: 0~10) を用いた自覚強度, 咬合接触様相ならびにHospital Anxiety and Depression Scale (HADS) を用いた不安・抑うつ気分との関連について検討を行った. 被験者は135名の学生である.はじめに, 顎機能検査にて135名の被験者は, 無症状69名 (無症状群) , 顎関節雑音のみ有する45名 (雑音群) ,...
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| Published in | 日本顎口腔機能学会雑誌 Vol. 15; no. 1; pp. 8 - 17 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本顎口腔機能学会
30.10.2008
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| Subjects | |
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| ISSN | 1340-9085 1883-986X |
| DOI | 10.7144/sgf.15.8 |
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| Summary: | 咬合感覚は顎関節症患者における疼痛症状ならびに精神心理的要因によっても変調することが考えられる.そこで, 本研究では顎関節雑音, 顎関節運動痛, 顎運動困難などの顎関節症症状と咬合感覚に関するNumerical Rating Scale (NRS: 0~10) を用いた自覚強度, 咬合接触様相ならびにHospital Anxiety and Depression Scale (HADS) を用いた不安・抑うつ気分との関連について検討を行った. 被験者は135名の学生である.はじめに, 顎機能検査にて135名の被験者は, 無症状69名 (無症状群) , 顎関節雑音のみ有する45名 (雑音群) , 顎関節運動痛を自覚する21名 (疼痛群) に分類された.顎関節症症状の自覚強度 (NRS) において, 疼痛群は, 無症状群に比べて顎関節雑音, 顎関節運動痛, 顎運動困難などの自覚強度に有意に大きい値を示した.雑音群は, 無症状群に比べて顎関節運動痛, 顎運動困難の自覚強度に有意に大きい値を示した.咬合接触様相ならびに不安・抑うつ尺度には, 無症状群, 雑音群, 疼痛群の3群間に有意な差異は示されなかった.また, 疼痛群は, 無症状群に比べて咬合感覚の自覚強度に有意な (p<0.05) 低下を示した. 一方, 135名の被験者は, HADSを用いて, 71名の健常群 (不安尺度0~7) と64名の不安群 (不安尺度8~) に分類された.顎関節雑音, 顎関節運動痛, 顎運動困難に関する自覚強度ならびに咬合接触, 咬合力とそれらの非対称性指数などに関する咬合接触様相には, 健常群と不安群の2群間で有意な差異は示されなかった.また, 不安群は, 健常群に比べて咬合感覚の自覚強度に低下傾向 (p=0.05) を示した.さらに, 不安群は, 健常群に比べて有意に (p<0.05) 大きい抑うつ尺度を示すとともに, 不安尺度と抑うつ尺度には有意な相関 (r=0.390, p<0.000) が示された. 以上のことから, 潜在的な顎関節症においても咬合感覚の良否は顎関節痛の発現や不安・抑うつ気分の亢進と深くかかわることが考えられた. |
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| ISSN: | 1340-9085 1883-986X |
| DOI: | 10.7144/sgf.15.8 |