クリンダマイシンおよびオメプラゾールを投与した犬におけるClostridioides difficileの過剰増殖
Clostridioides difficileは人における抗菌薬関連下痢の主たる原因である。この菌は犬の消化管からも分離されるが,抗菌薬や制酸剤の投与による変化についてはあまりわかっていない。本研究では,クリンダマイシン単独群,オメプラゾール併用群,還元麦芽糖による偽薬群を設定し,9頭の犬に対し7日間の経口投与を行った。糞便に対するイムノクロマトグラフ法では,全頭とも常にトキシンAおよびB陰性だったが,クリンダマイシンの投与された計6頭はいずれも8日目の時点でC. difficile抗原陽性となり,16日目には6頭中5頭が陰転した。リアルタイムPCR法で評価した糞便中C. difficile...
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Published in | 動物臨床医学 Vol. 30; no. 3; pp. 66 - 71 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
動物臨床医学会
25.09.2021
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Subjects | |
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ISSN | 1344-6991 1881-1574 |
DOI | 10.11252/dobutsurinshoigaku.30.66 |
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Summary: | Clostridioides difficileは人における抗菌薬関連下痢の主たる原因である。この菌は犬の消化管からも分離されるが,抗菌薬や制酸剤の投与による変化についてはあまりわかっていない。本研究では,クリンダマイシン単独群,オメプラゾール併用群,還元麦芽糖による偽薬群を設定し,9頭の犬に対し7日間の経口投与を行った。糞便に対するイムノクロマトグラフ法では,全頭とも常にトキシンAおよびB陰性だったが,クリンダマイシンの投与された計6頭はいずれも8日目の時点でC. difficile抗原陽性となり,16日目には6頭中5頭が陰転した。リアルタイムPCR法で評価した糞便中C. difficileのDNA量は,投与群で8あるいは12日目にピークに達しており,クリンダマイシンの投与は,オメプラゾールの有無に関わらず,C. difficileの過剰増殖を生じることが示された。一方,偽薬群では投与群に遅れてC. difficileが緩やかに増加しており,施設内での水平伝播が発生しやすいと推察された。これらの結果から,クリンダマイシンは人と犬で類似した腸内細菌叢への影響を及ぼし,また動物病院での衛生への配慮が必要であろうことが示唆された。 |
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ISSN: | 1344-6991 1881-1574 |
DOI: | 10.11252/dobutsurinshoigaku.30.66 |