深頸部膿瘍の降下性縦隔炎進展に関するリスク因子の検討
深頸部膿瘍は, 耳鼻咽喉科領域の緊急疾患の１つである. 今回われわれは, 当科で加療した深頸部膿瘍例における, 降下性縦隔炎進展のリスク因子を探索する目的で本研究を行った. 2013年１月１日から2023年６月１日の約10年間で, 当科で入院加療が行われた深頸部膿瘍57例を対象とし, 降下性壊死性縦隔炎への進展の有無で２群に分けた. 年齢, 性別, 既往歴, 原因疾患, 入院時の採血結果や入院後の経過と, 降下性壊死性縦隔炎進展との関連性について比較検討した. 57例中, 男性は36名, 女性は21名, 年齢中央値は64歳であった. 入院期間中央値は17日であり, 原疾患としては扁桃周囲膿瘍が...
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| Published in | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 128; no. 6; pp. 827 - 834 |
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| Main Authors | , , , , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.06.2025
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 2436-5793 2436-5866 |
| DOI | 10.3950/jibiinkotokeibu.128.6_827 |
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| Abstract | 深頸部膿瘍は, 耳鼻咽喉科領域の緊急疾患の１つである. 今回われわれは, 当科で加療した深頸部膿瘍例における, 降下性縦隔炎進展のリスク因子を探索する目的で本研究を行った. 2013年１月１日から2023年６月１日の約10年間で, 当科で入院加療が行われた深頸部膿瘍57例を対象とし, 降下性壊死性縦隔炎への進展の有無で２群に分けた. 年齢, 性別, 既往歴, 原因疾患, 入院時の採血結果や入院後の経過と, 降下性壊死性縦隔炎進展との関連性について比較検討した. 57例中, 男性は36名, 女性は21名, 年齢中央値は64歳であった. 入院期間中央値は17日であり, 原疾患としては扁桃周囲膿瘍が最多であった. 外科的ドレナージを要したのは51例であり, 気道確保を要したのは28例であった. 降下性縦隔炎を併発した８例については, 全例で同部位のドレナージを行った. 縦隔炎進展群は非進展群と比較して, 年齢, 白血球数, 好中球数が有意に高値, 入院期間, 抗菌薬投与期間が有意に長く, さらに気道確保の必要例, 複数回手術の必要例, 集中治療室の使用例, 人工呼吸器の使用例が有意に多かった. 死亡例は１例も認めなかった. 本研究結果より入院時の年齢, 白血球数, 好中球数が降下性縦隔炎に進展するリスク因子である可能性が示唆された. |
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| AbstractList | 深頸部膿瘍は, 耳鼻咽喉科領域の緊急疾患の1つである. 今回われわれは, 当科で加療した深頸部膿瘍例における, 降下性縦隔炎進展のリスク因子を探索する目的で本研究を行った. 2013年1月1日から2023年6月1日の約10年間で, 当科で入院加療が行われた深頸部膿瘍57例を対象とし, 降下性壊死性縦隔炎への進展の有無で2群に分けた. 年齢, 性別, 既往歴, 原因疾患, 入院時の採血結果や入院後の経過と, 降下性壊死性縦隔炎進展との関連性について比較検討した. 57例中, 男性は36名, 女性は21名, 年齢中央値は64歳であった. 入院期間中央値は17日であり, 原疾患としては扁桃周囲膿瘍が最多であった. 外科的ドレナージを要したのは51例であり, 気道確保を要したのは28例であった. 降下性縦隔炎を併発した8例については, 全例で同部位のドレナージを行った. 縦隔炎進展群は非進展群と比較して, 年齢, 白血球数, 好中球数が有意に高値, 入院期間, 抗菌薬投与期間が有意に長く, さらに気道確保の必要例, 複数回手術の必要例, 集中治療室の使用例, 人工呼吸器の使用例が有意に多かった. 死亡例は1例も認めなかった. 本研究結果より入院時の年齢, 白血球数, 好中球数が降下性縦隔炎に進展するリスク因子である可能性が示唆された. 深頸部膿瘍は, 耳鼻咽喉科領域の緊急疾患の１つである. 今回われわれは, 当科で加療した深頸部膿瘍例における, 降下性縦隔炎進展のリスク因子を探索する目的で本研究を行った. 2013年１月１日から2023年６月１日の約10年間で, 当科で入院加療が行われた深頸部膿瘍57例を対象とし, 降下性壊死性縦隔炎への進展の有無で２群に分けた. 年齢, 性別, 既往歴, 原因疾患, 入院時の採血結果や入院後の経過と, 降下性壊死性縦隔炎進展との関連性について比較検討した. 57例中, 男性は36名, 女性は21名, 年齢中央値は64歳であった. 入院期間中央値は17日であり, 原疾患としては扁桃周囲膿瘍が最多であった. 外科的ドレナージを要したのは51例であり, 気道確保を要したのは28例であった. 降下性縦隔炎を併発した８例については, 全例で同部位のドレナージを行った. 縦隔炎進展群は非進展群と比較して, 年齢, 白血球数, 好中球数が有意に高値, 入院期間, 抗菌薬投与期間が有意に長く, さらに気道確保の必要例, 複数回手術の必要例, 集中治療室の使用例, 人工呼吸器の使用例が有意に多かった. 死亡例は１例も認めなかった. 本研究結果より入院時の年齢, 白血球数, 好中球数が降下性縦隔炎に進展するリスク因子である可能性が示唆された. |
| Author | 福井 健太 折舘 伸彦 相澤 圭洋 禹 哲漢 佐野 大佑 足立 和斗 佐久間 巴 大氣 大和 波多野 孝 畠山 博充 吉田 興平 |
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| References | 3) 野中 誠, 門倉光隆 : 降下性壊死性縦隔炎 : 早期発見と適正な治療のために. 日集中医誌 2008; 15: 41-48. 18) 那須 隆, 小池修治, 青柳 優 : 深頸部感染症の起炎菌. JOHNS 2009; 25: 1623-1626. 15) Curtis JJ, Clark NC, McKenny CA, et al: Tracheostomy; a risk factor for mediastinitis after cardiac operation. Ann Thorac Surg 2001; 72: 731-734. 14) Takenaka T, Mizokami D, Takihata S, et al: A case of airway emergency due to deep neck infection treated by oral intubation without tracheostomy: Is tracheostomy essential in the treatment of deep neck abscesses? JHGM 2023; 5: 21-24. 13) Sugio K, Okamoto T, Maniwa Y, et al: Descending necrotizing mediastinitis and the proposal of a new calassification. JTCVS Open 2021; 8: 633-647. 10) 竹田将一郎, 小林泰輔, 中村光士郎 : 深頸部感染症28例の臨床的検討. 耳鼻臨床 2008; 101: 709-714. 19) 野田加奈子, 児島 悟, 野田謙二, 他 : 深頸部感染症299例の臨床的検討. 日耳鼻 2010; 113: 898-906. 16) 大淵豊明, 鈴木秀明 : 各科におけるステロイド療法のノウハウ―耳鼻咽喉科領域におけるステロイド療法―. 臨床と研究 2019; 96: 437-441. 11) 深本克彦, 市川銀一郎 : 進展した深頸部感染症の治療―文献的考察―. 耳鼻臨床 1995; 88: 773-779. 1) 渡辺哲生 : 深頸部膿瘍―予後診断の検討 解剖学的観点から―. 口咽科 2023; 36: 15-20. 9) 本間博臣, 竹村栄毅, 油井健史, 他 : 当院における深頸部膿瘍11症例の検討. 頭頸部外科 2012; 22: 209-214. 5) 阪上智史, 日高浩史, 八木正夫, 他 : 医療大規模データ (DPC) の応用～深頸部膿瘍の生命予後因子と経口摂取遅延因子の解析を通して～. 口咽科 2023; 36: 21-26. 6) 冨山克俊, 栃木康佑, 井上由佳理, 他 : 深頸部膿瘍症例に対する気管切開術併施に影響する因子の臨床的および画像的検討. 日気食会報 2021; 72: 16-22. 12) Endo S, Murayama F, Hasegawa T, et al: Guideline of surgical management based on diffusion of descending necrotizing mediastinitis. Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 1999; 47: 14-19. 2) 久保田瑛進, 佐藤遼介, 石田芳也, 他 : 深頸部膿瘍33例の検討. 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 2022; 2: 41-47. 7) 関 雅文, 朝野和典 : 血液検査～CRPの重要性～. 日内会誌 2011; 100: 3522-3526. 8) Chen M, Lei L, Jiang Z, et al: Risk factors of mortality and clinical characteristics in descending necrotizing mediastinitis: a retrospective evaluation of 181 patients. Ear Nose Throat J 2024; 1455613241304277. 17) 武田和也, 榎本圭佑, 原田祥太郎, 他 : 深頸部膿瘍症例の臨床的検討. 耳鼻感染症 ・ エアロゾル 2014; 2: 98-101. 4) Kimura A, Miyamoto S, Yamashita T: Clinical predictors of descending necrotizing mediastinitis after deep neck infections. Laryngoscope 2020; 130: E567-E572. |
| References_xml | – reference: 1) 渡辺哲生 : 深頸部膿瘍―予後診断の検討 解剖学的観点から―. 口咽科 2023; 36: 15-20. – reference: 16) 大淵豊明, 鈴木秀明 : 各科におけるステロイド療法のノウハウ―耳鼻咽喉科領域におけるステロイド療法―. 臨床と研究 2019; 96: 437-441. – reference: 18) 那須 隆, 小池修治, 青柳 優 : 深頸部感染症の起炎菌. JOHNS 2009; 25: 1623-1626. – reference: 5) 阪上智史, 日高浩史, 八木正夫, 他 : 医療大規模データ (DPC) の応用～深頸部膿瘍の生命予後因子と経口摂取遅延因子の解析を通して～. 口咽科 2023; 36: 21-26. – reference: 13) Sugio K, Okamoto T, Maniwa Y, et al: Descending necrotizing mediastinitis and the proposal of a new calassification. JTCVS Open 2021; 8: 633-647. – reference: 15) Curtis JJ, Clark NC, McKenny CA, et al: Tracheostomy; a risk factor for mediastinitis after cardiac operation. Ann Thorac Surg 2001; 72: 731-734. – reference: 19) 野田加奈子, 児島 悟, 野田謙二, 他 : 深頸部感染症299例の臨床的検討. 日耳鼻 2010; 113: 898-906. – reference: 3) 野中 誠, 門倉光隆 : 降下性壊死性縦隔炎 : 早期発見と適正な治療のために. 日集中医誌 2008; 15: 41-48. – reference: 12) Endo S, Murayama F, Hasegawa T, et al: Guideline of surgical management based on diffusion of descending necrotizing mediastinitis. Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 1999; 47: 14-19. – reference: 2) 久保田瑛進, 佐藤遼介, 石田芳也, 他 : 深頸部膿瘍33例の検討. 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 2022; 2: 41-47. – reference: 6) 冨山克俊, 栃木康佑, 井上由佳理, 他 : 深頸部膿瘍症例に対する気管切開術併施に影響する因子の臨床的および画像的検討. 日気食会報 2021; 72: 16-22. – reference: 8) Chen M, Lei L, Jiang Z, et al: Risk factors of mortality and clinical characteristics in descending necrotizing mediastinitis: a retrospective evaluation of 181 patients. Ear Nose Throat J 2024; 1455613241304277. – reference: 4) Kimura A, Miyamoto S, Yamashita T: Clinical predictors of descending necrotizing mediastinitis after deep neck infections. Laryngoscope 2020; 130: E567-E572. – reference: 14) Takenaka T, Mizokami D, Takihata S, et al: A case of airway emergency due to deep neck infection treated by oral intubation without tracheostomy: Is tracheostomy essential in the treatment of deep neck abscesses? JHGM 2023; 5: 21-24. – reference: 11) 深本克彦, 市川銀一郎 : 進展した深頸部感染症の治療―文献的考察―. 耳鼻臨床 1995; 88: 773-779. – reference: 17) 武田和也, 榎本圭佑, 原田祥太郎, 他 : 深頸部膿瘍症例の臨床的検討. 耳鼻感染症 ・ エアロゾル 2014; 2: 98-101. – reference: 7) 関 雅文, 朝野和典 : 血液検査～CRPの重要性～. 日内会誌 2011; 100: 3522-3526. – reference: 10) 竹田将一郎, 小林泰輔, 中村光士郎 : 深頸部感染症28例の臨床的検討. 耳鼻臨床 2008; 101: 709-714. – reference: 9) 本間博臣, 竹村栄毅, 油井健史, 他 : 当院における深頸部膿瘍11症例の検討. 頭頸部外科 2012; 22: 209-214. |
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| Title | 深頸部膿瘍の降下性縦隔炎進展に関するリスク因子の検討 |
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