がん生殖医療配偶子

がん治療の発展とがん経験者の思い 若年がん患者の治療の発達によりがんを克服したがん経験者(cancer survivor)が増加している.一方で,がんおよびがんの治療のため本来ヒトとして得られる機会やヒトとして本来兼ね備わっている機能の低下や消失することが問題になってきている.前者は,治療による労働の機会の喪失や学生においては教育を受けられない期間が存在することなどである.さらに後者としてがん治療によっては妊孕性(にんようせい;妊娠できる能力のこと)に影響を及ぼすことが知られており,がん経験者が高率に不妊となることや性ホルモンの分泌低下をきたすことが明らかとなってきている.これらのことからがん...

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Published inJournal of Japan Society of Perinatal and Neonatal Medicine Vol. 58; no. 4; pp. 666 - 668
Main Author Kimura Fuminori
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Japan Society of Perinatal and Neonatal Medicine 2023
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
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ISSN1348-964X
2435-4996
DOI10.34456/jjspnm.58.4_666

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Summary:がん治療の発展とがん経験者の思い 若年がん患者の治療の発達によりがんを克服したがん経験者(cancer survivor)が増加している.一方で,がんおよびがんの治療のため本来ヒトとして得られる機会やヒトとして本来兼ね備わっている機能の低下や消失することが問題になってきている.前者は,治療による労働の機会の喪失や学生においては教育を受けられない期間が存在することなどである.さらに後者としてがん治療によっては妊孕性(にんようせい;妊娠できる能力のこと)に影響を及ぼすことが知られており,がん経験者が高率に不妊となることや性ホルモンの分泌低下をきたすことが明らかとなってきている.これらのことからがん経験者は,自己に対する不安を抱えることや自信を喪失することが多いと考えられる.平成27-29年厚生労働科学研究「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」(堀部班)により生産世代にある若年がん経験者の多くが,自分の将来,仕事,経済的な状況,不妊治療や生殖機能に不安をいだいていることが明らかとなった(表1).Cardonickら1)は,がん経験者の希望と不安について下記のように論じている.がん経験者が最も幸福感を得ることのひとつに親になることがある.親になるということは,肉体的,社会的な正常性,幸福,人生の達成などを体験することとなり,がん経験者ががんを克服したひとつの形といえるためである.一方でがん経験者は,がんおよびその治療による子供の先天異常,悪性腫瘍の罹患,または成長・発達障害などの子孫に悪影響を及ぼすこと,また,自身のがんの再発,不妊症,流産のリスクなどを懸念している.このような中,生殖細胞の保護や保存し,がんを克服した後に挙児を得る症例が増加している.このような取り組みが先進国を中心になされるようになっている.
ISSN:1348-964X
2435-4996
DOI:10.34456/jjspnm.58.4_666