札幌市における院外心原性心停止症例の「ウツタイン様式」を用いた集計と地域間比較

1991年にCirculation誌に「ウツタイン様式」による院外心停止患者の調査報告のガイドラインが掲載され,世界各地でその集計及び解析が開始された。しかし「ウツタイン様式」による集計が地域網羅的かつ前向き調査で行われ,報告された論文は国際的にもいまだ数少なく,国内においてはさらに少ない。札幌市では札幌市消防局と市立札幌病院により「札幌ウツタイン様式研究会」を立ち上げ,2002年 1 月より「ウツタイン様式」を用いた院外心停止患者の集計を開始し,2005年 6 月までの 3 年 6 か月間の全心停止症例のデータを解析した。今回,札幌市における院外心原性心停止患者に対する「ウツタイン様式」を用...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 19; no. 11; pp. 1029 - 1039
Main Authors 佐々木, 博昭, 近江, 伸之, 牧瀬, 博, 遠藤, 晃生, 岡本, 征仁, 鹿野, 恒, 岡田, 基衛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 15.11.2008
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.19.1029

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Summary:1991年にCirculation誌に「ウツタイン様式」による院外心停止患者の調査報告のガイドラインが掲載され,世界各地でその集計及び解析が開始された。しかし「ウツタイン様式」による集計が地域網羅的かつ前向き調査で行われ,報告された論文は国際的にもいまだ数少なく,国内においてはさらに少ない。札幌市では札幌市消防局と市立札幌病院により「札幌ウツタイン様式研究会」を立ち上げ,2002年 1 月より「ウツタイン様式」を用いた院外心停止患者の集計を開始し,2005年 6 月までの 3 年 6 か月間の全心停止症例のデータを解析した。今回,札幌市における院外心原性心停止患者に対する「ウツタイン様式」を用いた集積・解析結果を報告し,国内及び海外地域間での比較を行うとともにその問題点を考察した。札幌市における発症目撃のある心原性心停止症例622例の心拍再開率は41.3%,入院率は37.8%,生存退院率16.9%, 3 か月生存率は15.6%であり,国内外の報告と比較しても良好な結果であった。また,心原性心停止のなかで初期調律がVF/VTであった症例181例の心拍再開率は68.0%,入院率は65.2%,生存退院率は38.7%であり国際的にも高い水準であった。しかしながら,これまでに誌上報告されているウツタイン様式の調査を検討すると,その調査範囲や調査期間,発症目撃の比率,VF/VTの比率や蘇生実施状況に大きな差異を認めた。今後,本格的に地域間での比較検討を行うためには,調査範囲や調査期間に関してはある一定の指針が必要であり,その地域における蘇生実施状況などの評価も必要であると考えられた。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.19.1029