耳鼻咽喉科の在宅医療 川崎市5年間のまとめ

少子高齢化社会の到来に伴い, 地域包括ケアシステムの構築に伴う在宅医療の重要性が指摘されている. 今後10年にかけては東京, 神奈川など大都市部において高齢者割合の増加が見込まれており, 人口150万都市である川崎市の耳鼻咽喉科在宅医療の現状を検討したので報告する. 対象期間は2009年8月~2014年12月まで, 男性27例女性74例で計101例であった. 初診時年齢は51~103歳で平均年齢は86.4歳であった. 約5年間の往診総回数は193回で月平均2.9回であった. 1人当たりの往診回数は1~13回で平均1.9回であった. 往診依頼の約8割は耳に関するものであり, 全依頼の約5割は耳垢...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 9; pp. 1167 - 1172
Main Authors 小見山, 彩子, 佐々木, 優子, 茂木立, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.09.2018
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.121.1167

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Summary:少子高齢化社会の到来に伴い, 地域包括ケアシステムの構築に伴う在宅医療の重要性が指摘されている. 今後10年にかけては東京, 神奈川など大都市部において高齢者割合の増加が見込まれており, 人口150万都市である川崎市の耳鼻咽喉科在宅医療の現状を検討したので報告する. 対象期間は2009年8月~2014年12月まで, 男性27例女性74例で計101例であった. 初診時年齢は51~103歳で平均年齢は86.4歳であった. 約5年間の往診総回数は193回で月平均2.9回であった. 1人当たりの往診回数は1~13回で平均1.9回であった. 往診依頼の約8割は耳に関するものであり, 全依頼の約5割は耳垢除去目的であった. 行った処置では耳垢栓塞除去術が最も多く43例であった. 耳垢除去目的で往診するも51例中8例は耳垢を認めなかった. 難聴は認知症の危険因子とされ, 早期から聴覚管理をすることは耳鼻咽喉科医の役目である. また, わが国における死因の第3位が肺炎であり, 嚥下障害による嚥下性肺炎が原因と考えられている. 嚥下障害の在宅医療も超高齢社会においては極めて重要な問題である. 平成29年度において診療報酬上はまだ耳鼻咽喉科医が訪問診療を積極的に行える状態にはない. 耳鼻咽喉科医による往診の社会的ニーズは今後とも増加すると考えられるが, 日々多忙な耳鼻咽喉科医がどのような形で在宅医療に関与するべきか議論を要する時期である.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.121.1167