小腸と瘻孔を形成した腸管症型T細胞リンパ腫の1例

小腸腫瘍は早期の発見が困難で,腸閉塞や出血,穿孔性腹膜炎を契機に診断されることがあるが,遊離腹腔への穿孔を伴わない腸瘻,膿瘍の状態で診断されることはまれである.症例は78歳の男性で,2週間前からの腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CTで腹腔内に内部に気泡を含み水平面を形成する約10 cm径の不整形腫瘤を認め入院精査とした.消化管造影で複数か所の小腸とこの膿瘍腔への造影剤の交通を認め,膿瘍を介した小腸-小腸瘻と診断した.瘻孔の治療および腫瘍の確定診断の目的で手術を行った.膿瘍壁は小腸,結腸の腸間膜に広く癒着しており,内腔には2か所の小腸が開口していた.2か所の小腸切除術を行ったが膿瘍壁の全摘出は断...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 51; no. 10; pp. 640 - 648
Main Authors 冨永, 奈沙, 越川, 克己, 西, 鉄生, 福岡, 伴樹, 西尾, 知子, 真田, 祥太朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.10.2018
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2017.0197

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Summary:小腸腫瘍は早期の発見が困難で,腸閉塞や出血,穿孔性腹膜炎を契機に診断されることがあるが,遊離腹腔への穿孔を伴わない腸瘻,膿瘍の状態で診断されることはまれである.症例は78歳の男性で,2週間前からの腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CTで腹腔内に内部に気泡を含み水平面を形成する約10 cm径の不整形腫瘤を認め入院精査とした.消化管造影で複数か所の小腸とこの膿瘍腔への造影剤の交通を認め,膿瘍を介した小腸-小腸瘻と診断した.瘻孔の治療および腫瘍の確定診断の目的で手術を行った.膿瘍壁は小腸,結腸の腸間膜に広く癒着しており,内腔には2か所の小腸が開口していた.2か所の小腸切除術を行ったが膿瘍壁の全摘出は断念した.病理組織学的検査で腸管症型T細胞リンパ腫と診断し,化学療法を行ったが術後250日で死亡した.瘻孔を形成した悪性リンパ腫について検討し,同様の病態を呈しうる小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)の瘻孔形成症例と比較した.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2017.0197