光環境の違いがコナラ植栽木の成長と生残に及ぼす影響

ナラ枯れ跡地やコナラ材を収穫した保残伐跡地においてコナラの植栽が行われているが,保残木があるため光環境は多様である。光環境の違いがコナラ植栽木の成長と生残に及ぼす影響を明らかにするため,富山県内のコナラ人工林22事業地において,1事業地当たり2調査区を設けて植栽5年後の生育状況を調べた。3事業地は皆伐跡地,19事業地は保残伐跡地で,毎年下刈りが実施された。調査区の散乱光透過率は5~94%と大きな幅があり,保残木の多寡と対応していた。暗い環境では先枯れによる樹高低下が多発した。モデル式の推定値に基づくと,散乱光透過率24%未満では樹高成長ができず,16%未満では生存率が66.6%未満に低下したこ...

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Published in日本森林学会誌 Vol. 106; no. 8; pp. 215 - 224
Main Author 中島, 春樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本森林学会 28.12.2024
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ISSN1349-8509
1882-398X
DOI10.4005/jjfs.106.215

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Summary:ナラ枯れ跡地やコナラ材を収穫した保残伐跡地においてコナラの植栽が行われているが,保残木があるため光環境は多様である。光環境の違いがコナラ植栽木の成長と生残に及ぼす影響を明らかにするため,富山県内のコナラ人工林22事業地において,1事業地当たり2調査区を設けて植栽5年後の生育状況を調べた。3事業地は皆伐跡地,19事業地は保残伐跡地で,毎年下刈りが実施された。調査区の散乱光透過率は5~94%と大きな幅があり,保残木の多寡と対応していた。暗い環境では先枯れによる樹高低下が多発した。モデル式の推定値に基づくと,散乱光透過率24%未満では樹高成長ができず,16%未満では生存率が66.6%未満に低下したことから,このような暗い環境は植栽に不適と考えられた。樹高は明るいほど高かったが,生存率は中間的な明るさの散乱光透過率50%前後で高かった。4調査区で調べたところ,明るいほど競合植生が繁茂し,誤伐率は高かった(最大50%)ため,これらが明るい環境での生存率の低下要因だと推測された。散乱光透過率が50%前後だと樹高成長は緩慢だが生存率は高く保たれやすく,コナラの人工更新が成功しやすい可能性がある。
ISSN:1349-8509
1882-398X
DOI:10.4005/jjfs.106.215