頸部皮下気腫感染から壊死性筋膜炎への波及が疑われた1例

頸部皮下気腫は,外傷や手術操作,ガス産生菌感染などによって発症し,機序は多岐に渡り,経過や治療,予後はそれぞれの病態によって異なる.本症例は52歳女性.慢性呼吸不全のため5ヵ月前に気管切開術を施行し,その後カニューレ管理のため外来通院をおこなっていた.2日前からの頸部痛,咽頭痛を主訴に当院を受診し,頸胸部単純CT検査において右頸部皮下の脂肪織混濁,気腫を認めたため,抗菌薬内服を開始した.しかし翌日に症状の増悪を認めたため撮像した頸胸部造影CT検査において,縦隔気腫が拡大していたため,入院加療となった.気管カニューレの慢性的な刺激により気管壁が菲薄化し皮下気腫が生じたと判断し,カニューレの変更お...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 67; no. 3; pp. 149 - 153
Main Authors 由井 亮輔, 島田 顕央, 山口 裕聖, 和田 弘太, 藤川 桃紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.07.2024
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo.67.3_149

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Summary:頸部皮下気腫は,外傷や手術操作,ガス産生菌感染などによって発症し,機序は多岐に渡り,経過や治療,予後はそれぞれの病態によって異なる.本症例は52歳女性.慢性呼吸不全のため5ヵ月前に気管切開術を施行し,その後カニューレ管理のため外来通院をおこなっていた.2日前からの頸部痛,咽頭痛を主訴に当院を受診し,頸胸部単純CT検査において右頸部皮下の脂肪織混濁,気腫を認めたため,抗菌薬内服を開始した.しかし翌日に症状の増悪を認めたため撮像した頸胸部造影CT検査において,縦隔気腫が拡大していたため,入院加療となった.気管カニューレの慢性的な刺激により気管壁が菲薄化し皮下気腫が生じたと判断し,カニューレの変更および広域抗菌薬静脈投与を開始したが,入院翌日に敗血症性ショックになり死亡した.本症例は気管カニューレが気管壁を刺激し,菲薄化していた部分が感染を引き起こしたことによって穿孔をきたし,皮下気腫が発生したと考えられた.また入院後の急激な進行と病態から,壊死性筋膜炎をきたしていた可能性が考えられた.壊死性筋膜炎は,迅速に診断し,広域抗菌薬投与やデブリドマンを早期におこなうことが良好な予後のために重要である.
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo.67.3_149