慢性肝疾患の経過観察中に診断および切除に至った膵癌の臨床学的特徴

目的:膵癌の予後向上には早期診断が重要だがそのアルゴリズムは確立されていない.本研究では慢性肝疾患(chronic liver disease;以下,CLDと略記)に対する肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCCと略記)のサーベイランス中に診断され,切除に至った膵癌の特徴について検討した.方法:2011~2019年に当科で切除を行った膵癌110例を,CLDのフォロー中に診断された16例(HCC surveillance群;以下,HS群と略記)とその他94例(non-surveillance群;以下,NS群と略記)に大別し,臨床病理学的特徴を後方視的に比較検討した...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 55; no. 5; pp. 302 - 310
Main Authors 中島, 隆善, 生田, 真一, 栁, 秀憲, 山中, 若樹, 藤川, 正隆, 岡本, 亮, 一瀬, 規子, 相原, 司, 笠井, 明大, 仲本, 嘉彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2022
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2020.0102

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Summary:目的:膵癌の予後向上には早期診断が重要だがそのアルゴリズムは確立されていない.本研究では慢性肝疾患(chronic liver disease;以下,CLDと略記)に対する肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCCと略記)のサーベイランス中に診断され,切除に至った膵癌の特徴について検討した.方法:2011~2019年に当科で切除を行った膵癌110例を,CLDのフォロー中に診断された16例(HCC surveillance群;以下,HS群と略記)とその他94例(non-surveillance群;以下,NS群と略記)に大別し,臨床病理学的特徴を後方視的に比較検討した.結果:HS群の内3例はHCCの治療歴を有していた.HS群はNS群より診断時の有症状率が低くresectable膵癌の割合が高率であった.また,主要脈管合併切除の併施率が低く,R0切除率が高く,早期ステージ(0~IIA)の占める割合が有意に高かった.HS群では13例(81.3%)がHCCサーベイランス目的の画像検査を契機に膵癌が発見されていたが,NS群で画像診断を契機としたものは5例(5.3%)に止まった.結語:CLDにおけるHCCサーベイランスは無症候かつ比較的早期の膵癌および切除可能膵癌の発見に寄与する可能性がある.肝疾患フォロー中の画像診断では肝臓だけでなく膵臓にも目を配る姿勢が肝要である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0102