待機的transabdominal preperitoneal approach法が有用であった巨大鼠径部Maydl’s herniaの1例

症例は61歳の男性で,左鼠径部腫脹を主訴に受診した.同部は小児頭大に腫脹し,CTで巨大な鼠径ヘルニアおよびヘルニア囊内と腹腔内の小腸に造影不良を認めたため緊急手術を施行した.鼠径法,下腹部正中切開を行い鼠径部ヘルニア分類(新JHS分類)L3型ヘルニアおよび小腸に250 cmに渡り色調・蠕動不良を認めたが,改善傾向であったため温存し,狭窄・壊死などによる再手術も考慮しヘルニア門は解放のまま待機的手術の方針とした.術後は下血,炎症反応の高値がみられたが保存的に改善し,初回手術後22日目にtransabdominal preperitoneal approach(以下,TAPPと略記)法による根治術...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 55; no. 5; pp. 341 - 348
Main Authors 佐藤, やよい, 夏目, 俊之, 田中, 元, 桑山, 直樹, 松本, 泰典, 宮崎, 彰成, 貝沼, 修, 平澤, 壮一朗, 丸山, 尚嗣, 野手, 洋雅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2022
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2021.0040

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Summary:症例は61歳の男性で,左鼠径部腫脹を主訴に受診した.同部は小児頭大に腫脹し,CTで巨大な鼠径ヘルニアおよびヘルニア囊内と腹腔内の小腸に造影不良を認めたため緊急手術を施行した.鼠径法,下腹部正中切開を行い鼠径部ヘルニア分類(新JHS分類)L3型ヘルニアおよび小腸に250 cmに渡り色調・蠕動不良を認めたが,改善傾向であったため温存し,狭窄・壊死などによる再手術も考慮しヘルニア門は解放のまま待機的手術の方針とした.術後は下血,炎症反応の高値がみられたが保存的に改善し,初回手術後22日目にtransabdominal preperitoneal approach(以下,TAPPと略記)法による根治術を行い,初回術後24日目に退院となった.Maydl’s herniaでは,鼠径部切開だけでは腹腔内の虚血腸管を見逃す可能性があり術前画像評価が重要である.また,巨大鼠径ヘルニア嵌頓では術後のabdominal compartment syndrome(以下,ACSと略記)リスクを鑑みた戦略が必要であり,大量腸切除を回避する方策も求められる.待機的なTAPP法は,大量腸切除およびACSを回避しうる有用な治療選択肢であると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2021.0040