血管型Ehlers-Danlos症候群患者の下部消化管穿孔に対して保存的加療が奏効した1例

症例は24歳の女性で,左側腹部痛を主訴に救急外来を受診した.両側内頸動脈解離,両側椎骨動脈解離の既往があり,受診8か月前に血管型Ehlers-Danlos症候群(Ehlers-Danlos syndrome;以下,EDSと略記)と診断されていた.受診時の腹部造影CTで結腸脾彎曲部の腸管壁内気腫および近傍の腹腔内にfree airを認め,下部消化管穿孔が疑われた.圧痛部位が限局しており汎発性腹膜炎の所見がなかったこと,また,血管型EDS患者の手術に伴うリスクを考慮して,保存的治療を行う方針とした.入院後,炎症反応と腹部症状の改善を認め,第29病日に軽快退院となった.消化管穿孔に対する治療は手術が...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 54; no. 8; pp. 556 - 562
Main Authors 茂田, 浩平, 岡林, 剛史, 清島, 亮, 北川, 雄光, 水野, 翔大, 鶴田, 雅士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2021
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2020.0103

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Summary:症例は24歳の女性で,左側腹部痛を主訴に救急外来を受診した.両側内頸動脈解離,両側椎骨動脈解離の既往があり,受診8か月前に血管型Ehlers-Danlos症候群(Ehlers-Danlos syndrome;以下,EDSと略記)と診断されていた.受診時の腹部造影CTで結腸脾彎曲部の腸管壁内気腫および近傍の腹腔内にfree airを認め,下部消化管穿孔が疑われた.圧痛部位が限局しており汎発性腹膜炎の所見がなかったこと,また,血管型EDS患者の手術に伴うリスクを考慮して,保存的治療を行う方針とした.入院後,炎症反応と腹部症状の改善を認め,第29病日に軽快退院となった.消化管穿孔に対する治療は手術が基本とされているが,創傷治癒遅延により重大な術後合併症を起こす場合が多く慎重な治療方針決定が望まれる.本症例のように来院時に血管型EDSと診断されている場合には,症状が軽度で全身状態が保たれていれば保存的治療も選択肢の一つとなることが示唆された.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0103