先天性プロテインC欠損症を有する膵管内乳頭粘液性腺癌に対して周術期に活性化プロテインC製剤を投与し膵頭十二指腸切除術を施行した1例

症例は58歳の男性で,先天性プロテインC(以下,PCと略記)欠損症の家族歴があり,42歳時に同症と診断されていた.食思不振を主訴に前医を受診しCTで膵鉤部に径25 mmの囊胞性病変を認めた.門脈/上腸間膜静脈は血栓で閉塞し肝十二指腸間膜に著明な側副血行路を認めた.5か月後のCTで囊胞径が53 mmに増大し,当院で精査を施行した.膵管内乳頭粘液性腺癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.肝十二指腸間膜の側副血行路は温存した.活性化PC製剤を術直前から第1病日まで15,000単位/dayの用量で24時間持続投与し,その前後はヘパリンを持続投与した.術後は側副血行路に無症候性の小血栓を認め...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 55; no. 2; pp. 106 - 114
Main Authors 水間, 正道, 元井, 冬彦, 海野, 倫明, 千葉, 和治, 大塚, 英郎, 森川, 孝則, 中川, 圭, 益田, 邦洋, 林, 洋毅, 亀井, 尚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.02.2022
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2020.0083

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Summary:症例は58歳の男性で,先天性プロテインC(以下,PCと略記)欠損症の家族歴があり,42歳時に同症と診断されていた.食思不振を主訴に前医を受診しCTで膵鉤部に径25 mmの囊胞性病変を認めた.門脈/上腸間膜静脈は血栓で閉塞し肝十二指腸間膜に著明な側副血行路を認めた.5か月後のCTで囊胞径が53 mmに増大し,当院で精査を施行した.膵管内乳頭粘液性腺癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.肝十二指腸間膜の側副血行路は温存した.活性化PC製剤を術直前から第1病日まで15,000単位/dayの用量で24時間持続投与し,その前後はヘパリンを持続投与した.術後は側副血行路に無症候性の小血栓を認めるも肝不全や腸管うっ血の合併症なく経過し第36病日に退院した.PC欠損症を有する膵頭十二指腸切除に対して活性化PC製剤を周術期に投与した報告はなく,今後の周術期管理の参考になると考えられるため報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2020.0083