自然消退した上行結腸癌の1例
悪性腫瘍の自然消退の報告は時折見られるが,大腸癌の自然消退は非常にまれであり,本邦でもごく少数の報告にとどまる.今回,上行結腸癌が自然消退した1例を経験したので報告する.症例は62歳の男性で,検診にて便潜血を指摘された.下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に2型腫瘍を認め,生検にて中分化型~低分化型腺癌の診断となった(cT2N0M0,cStage I).手術非適応要件なく,約1か月後に腹腔鏡下右半結腸切除術,D3リンパ節郭清を施行した.摘出標本の病理所見では,術前に腫瘍を認めた部位は潰瘍瘢痕のみで,組織学的にも悪性所見およびリンパ節転移を認めなかった.術後に下部消化管内視鏡検査を再検したが他病変を...
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| Published in | 日本消化器外科学会雑誌 Vol. 52; no. 2; pp. 106 - 111 |
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| Main Authors | , , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本消化器外科学会
01.02.2019
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| Subjects | |
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| ISSN | 0386-9768 1348-9372 |
| DOI | 10.5833/jjgs.2018.0064 |
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| Summary: | 悪性腫瘍の自然消退の報告は時折見られるが,大腸癌の自然消退は非常にまれであり,本邦でもごく少数の報告にとどまる.今回,上行結腸癌が自然消退した1例を経験したので報告する.症例は62歳の男性で,検診にて便潜血を指摘された.下部消化管内視鏡検査にて上行結腸に2型腫瘍を認め,生検にて中分化型~低分化型腺癌の診断となった(cT2N0M0,cStage I).手術非適応要件なく,約1か月後に腹腔鏡下右半結腸切除術,D3リンパ節郭清を施行した.摘出標本の病理所見では,術前に腫瘍を認めた部位は潰瘍瘢痕のみで,組織学的にも悪性所見およびリンパ節転移を認めなかった.術後に下部消化管内視鏡検査を再検したが他病変を認めず,大腸癌の自然消退と診断した.自然消退のメカニズムについて,さまざまな説が唱えられているが,詳細はいまだ不明である.再発や予後についても定まった見解がなく,今後も定期的な経過観察が必要である. |
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| ISSN: | 0386-9768 1348-9372 |
| DOI: | 10.5833/jjgs.2018.0064 |