四塩化炭素からトキシコロジーを学ぶ
1. CCl4肝障害とは CCl4は19世紀中頃に麻酔薬として用いられたが, CHCl3よりも麻酔作用が弱く, 肝障害作用が強いため麻酔薬としての使用は途絶えた. その後, 駆虫薬(鉤虫)として一時経口使用されたことがあり, また工業溶媒中毒などで肝障害毒として再び注目されるようになった. 1) CCl4は種々の動物で肝臓に激しい障害を起こす. ラットにおける急性肝障害では, 通常24時間後には中心静脈周辺の肝細胞壊死, 白血球の浸潤, 脂肪沈着とともに血漿トランスアミナーゼ活性が著しく上昇する. 肝臓は膨れて変色する. 48時間後には細胞分裂が盛んになり, 72時間後にはほぼ正常の組織像に回...
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Published in | YAKUGAKU ZASSHI Vol. 126; no. 10; pp. 885 - 899 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬学会
01.10.2006
日本薬学会 |
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ISSN | 0031-6903 1347-5231 |
DOI | 10.1248/yakushi.126.885 |
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Summary: | 1. CCl4肝障害とは CCl4は19世紀中頃に麻酔薬として用いられたが, CHCl3よりも麻酔作用が弱く, 肝障害作用が強いため麻酔薬としての使用は途絶えた. その後, 駆虫薬(鉤虫)として一時経口使用されたことがあり, また工業溶媒中毒などで肝障害毒として再び注目されるようになった. 1) CCl4は種々の動物で肝臓に激しい障害を起こす. ラットにおける急性肝障害では, 通常24時間後には中心静脈周辺の肝細胞壊死, 白血球の浸潤, 脂肪沈着とともに血漿トランスアミナーゼ活性が著しく上昇する. 肝臓は膨れて変色する. 48時間後には細胞分裂が盛んになり, 72時間後にはほぼ正常の組織像に回復する. 一方, 週2-3回, 2ヵ月ほどの連続投与により, 肝線維化を経て肝硬変に至る(Figs. 1, 2). したがって, ccl4は急性肝障害, 肝硬変, 肝再生のメカニズムの研究や, 病態モデルとして新薬開発に広く利用されている. CCl4肝障害メカニズムの動物での研究は1920年代から始まり, 2)現在も続いている. その報告は膨大な数に上り, いくつかの仮説が現れて議論されてきた. |
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ISSN: | 0031-6903 1347-5231 |
DOI: | 10.1248/yakushi.126.885 |