10年以上未治療で経過し,回腸穿孔による汎発性腹膜炎を発症したCrohn病の1例

患者は26歳,男性.1995年頃に他院でCrohn病と診断されるも,自己判断にて治療を受けていなかった.2006年12月初旬から下痢,腹痛,発熱を認め,腹痛が増強したために紹介受診となった.腹部は板状硬で筋性防御を認め,腹部CT検査で腹水の貯留と回腸末端部に著明な壁肥厚と強い造影効果を認めたため,Crohn病による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.腹腔内に膿性腹水を認め,小腸穿孔による汎発性腹膜炎であり,小腸部分切除術を施行した.切除標本は,肉眼所見で120cmにわたる縦走潰瘍と狭窄を,病理所見で類上皮細胞性肉芽腫と全層性の炎症性細胞浸潤を認めた.術後1年9カ月現在,食事療法,内服加療,...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 70; no. 4; pp. 1081 - 1085
Main Authors 石川, 博文, 横山, 貴司, 渡辺, 明彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2009
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.70.1081

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Summary:患者は26歳,男性.1995年頃に他院でCrohn病と診断されるも,自己判断にて治療を受けていなかった.2006年12月初旬から下痢,腹痛,発熱を認め,腹痛が増強したために紹介受診となった.腹部は板状硬で筋性防御を認め,腹部CT検査で腹水の貯留と回腸末端部に著明な壁肥厚と強い造影効果を認めたため,Crohn病による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.腹腔内に膿性腹水を認め,小腸穿孔による汎発性腹膜炎であり,小腸部分切除術を施行した.切除標本は,肉眼所見で120cmにわたる縦走潰瘍と狭窄を,病理所見で類上皮細胞性肉芽腫と全層性の炎症性細胞浸潤を認めた.術後1年9カ月現在,食事療法,内服加療,抗TNF-α抗体の維持療法を行い,現在Crohn病の再発,増悪は認めていない. Crohn病に対する定期診察と適切な治療の必要性を再認識させられた症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.70.1081