多数の前リンパ球様幼若リンパ球が出現し,急性転化をおこしたと思われるB細胞型慢性リンパ性白血病の1症例

急性転化をおこしたと思われるB細胞型慢性リンパ性白血病(B-CLL)の1症例について報告する.症例は72才,男で,昭和52年末より脾腫を触れていたが放置,昭和53年8月より脾腫の増大を来したため同年12月1日入院した.リンパ節腫なく,巨脾をみとめ,貧血はなく,白血球数46000と増加し,このうち88%がリンパ球系細胞であつた.これらリンパ球のうち68%が幼若異型リンパ球であつた.この幼若リンパ球は,大型で,核が異型性を呈し,比較的クロマチンに富んでいるが,核小体を明瞭にみとめた.細胞の表面形質検査で,これらリンパ球細胞はIgMλの表面免疫グロブリンを保有しており, B cellのmonoclo...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 70; no. 6; pp. 860 - 865
Main Authors 星崎, 東明, 福山, 隆之, 友野, 尚美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 1981
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.70.860

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Summary:急性転化をおこしたと思われるB細胞型慢性リンパ性白血病(B-CLL)の1症例について報告する.症例は72才,男で,昭和52年末より脾腫を触れていたが放置,昭和53年8月より脾腫の増大を来したため同年12月1日入院した.リンパ節腫なく,巨脾をみとめ,貧血はなく,白血球数46000と増加し,このうち88%がリンパ球系細胞であつた.これらリンパ球のうち68%が幼若異型リンパ球であつた.この幼若リンパ球は,大型で,核が異型性を呈し,比較的クロマチンに富んでいるが,核小体を明瞭にみとめた.細胞の表面形質検査で,これらリンパ球細胞はIgMλの表面免疫グロブリンを保有しており, B cellのmonoclonalな増殖を示すCLLと診断した.経過は抗白血病薬の投与で一時効果をみとめるも漸次衰弱し,昭和55年1月7日死亡した.入院後1年1ヵ月余,脾腫に気づいてから約2年の経過であつた.本症例は,末梢血に出現した幼若異型リンパ球の形態から, Galtonらのいうprolymphocytic leukemiaとも考えられるが,病像からみてかなり以前からCLLに罹患していたことが予想され,初診時貧血なく,白血球,とくにリンパ球増加がそれほど著明でなく,一時的であるが治療に反応したこと,また,末梢血に小型成熟リンパ球と幼若異型リンパ球が混在し,両者の細胞表面形質が同一であることより,小型成熟リンパ球より幼若リンパ球への転化が考えられ, CLLの経過中に急性転化をおこしたものと考える.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.70.860